第37話 私と好きな人(先輩)とかっこいい姿




「みことちゃん、ごめんね。嫌、だよね?こんな雰囲気…」


パート練習の休憩時間は必ずこう先輩はホールから出て行く。たぶん、ゆめ先輩と一緒にいると空気が悪くなるから…私とゆめ先輩に気を遣っているのだろう。でも、そのせいでこう先輩とゆめ先輩が関わる機会が減っているのに…

こう先輩もゆめ先輩も、お互いから逃げてる気がする。たぶん、互いが互いのためって思っているけど…私には、互いが自分が傷つきたくないから逃げているように見える。特にこう先輩が……


「嫌…ですね。正直言って、ちょっと…かなりキツイです」

「ごめんね」


私の答えを聞くとゆめ先輩は申し訳なさそうに私に頭を下げる。正直言って、私に謝るくらいなら、こう先輩に謝って欲しい。このまま、お互いが避け合っていたら絶対、この関係は改善されない。


「ゆめ先輩、こう先輩から逃げないであげてください。こう先輩も…ですけど、お互いが避け合っていたら…解決できるわけないです……」

「………」


私の言葉を聞いたゆめ先輩はすごく複雑な表情をする。戸惑い、拒絶、嫌悪感、様々な感情を感じてしまう。


「みことちゃん…ごめんね。情けない先輩で…ダメな先輩で…」

「今まで、そう言って逃げ続けてきたんですよね」


ゆめ先輩は意識してやっているわけではないが、今まで、周りの人がこう先輩から逃げないように言うと、ゆめ先輩は決まって同じことを言って来たのだろう。ゆめ先輩の言葉を聞いて、最初は…無理しなくてもいい。と思ってしまったが、そうやって甘やかしてしまうから…逃げ癖のようなものがついてしまっているのではないか。


「私、ちょっと外出てきます。こう先輩が戻ってきたら…少し話してあげて欲しいです。きっと、ゆめ先輩から話しかければこう先輩喜んでくれますよ」


私は笑顔でそう言い残してホールを出た。ホールを出た私が向かう場所は……




「こう先輩みーつけた」


ホールを出て少し歩いた場所にある自販機の横のベンチに座るこう先輩に私は声をかける。


「みことちゃん…その、ごめんね」

「悪いと思っているのなら…逃げないでください」

「え…」

「私、こう先輩に憧れてます。すごく優しい先輩で、頼りになる先輩で、理想の先輩です。だから、逃げ回ってる先輩は見たくないです。私に、かっこいい先輩の姿を見せてください。背中は私が押しますから…」


私が言うと、こう先輩も先程のゆめ先輩のような表情をする。なんだかんだで似てるんだよな。


「ゆめ先輩、ホールにいますよ。私、休憩時間終わるまでホール戻りませんから、行ってきてください」

「………」

「かっこいい先輩の姿、見せてください」

「厳しい後輩だね」


こう先輩は立ち上がる。そして、わかった。と言って、ホールに戻って言った。





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