第36話 私と天使(妹)と夏の始まり
あの日から数ヶ月が経過して季節は夏の始めの6月後半…かなり暑くなってきて、8月の頭にあるコンクールまであと少しという季節になっていた。
相変わらず天使(妹)は私にべったりで私は妹にべったり。下宿を始めてから一度も実家には帰省していない。コンクールが終わって夏休みになったらバイトの休みをもらって妹を連れてゆっくり帰省したいな。
「…………」
「…………」
「…………」
コンクールまであと少し、なのにも関わらず……
チューバパートは仲が悪い笑
私が入部したばかりの頃は…まだ、マシだったよ。うん。でも、最近はゆめ先輩がこう先輩苦手オーラを隠さなくなってきて……かなり最悪の雰囲気になっている。
「もう嫌だ…疲れる。あの空間にいたくない」
部活が終わり妹と久留美ちゃんと帰っている途中に私はぼやいた。
「あはは…まあ、そうなるよねぇ」
久留美ちゃんは引きつった笑みを浮かべて私に言う。何が嫌かってさぁ……どっちもすごく、すごーくいい先輩なんだよ。私と2人きりの時は……
おまけにどちらが悪い。とか、そういう問題じゃないんだよね。はっきり言ってどちらも悪い……最初は、こう先輩嫌いオーラを発しているゆめ先輩が悪い…と思っていたが、こう先輩も露骨にゆめ先輩に好き好きアピールしているからなぁ。しかも、恋愛経験ありませんオーラ全開の割とめんどくさい系のアピール……
私から見ればどちらも悪い。
なのに……
「こう君は悪くないよ。一方的に苦手意識持ってる私が悪いの」
「ゆめ先輩は悪くないよ。いつまでも諦めない僕が悪いから…」
と、どちらも自分が悪いと思い込んでいて、相手にも悪い点があると考えようとしない。結果、自分が悪いと言う感情にお互いが囚われて微妙な雰囲気が作り出されている。どちらも、人間関係や恋愛が下手くそなのだ。
「それにしてもこう先輩、未だにお姉ちゃんから好意を持たれてるって気づかないのすごいよね」
「みーちゃんも結構露骨なのにねぇ」
「案外気づいていたりして」
「あー、ありそう。気づいているけど、僕はゆめ先輩のことが好きだから…って気づいてないフリしていたりして…」
「そうだったらお姉ちゃんめっちゃ可哀想…あ、え、お姉ちゃん、ちょっと、泣かないで」
「あ、え、みーちゃん、冗談、冗談だからね。こう先輩そんな酷い人じゃないだろうし、ただ単に鈍いだけだと思うよ」
「そう?」
妹と久留美ちゃんの話を間に受けて私が泣き出すと2人は慌てて私を宥めようとする。私の問いかけに2人は勢いよく首を縦に振る。
まだ、こう先輩は気づいてないのかな……
私の恋は…これからどうなるのだろうか……
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