第34話 私と天使(妹)と友達と鍋
「今日の夜ご飯はミルフィーユ鍋だよ」
アパートに帰宅して、すぐに、冷蔵庫から今朝、天使(妹)と一緒に仕込みをしておいた具材を取り出して鍋に盛り付けて、テーブルの上にガスコンロを置いて火をつける。
「おー美味しそうだね」
「お姉ちゃんの料理すっごく美味しいんだよ」
「へー、それは期待しちゃうなぁ」
妹が容赦なく料理へのハードルを上げてくれる。いや、そんなに期待されても鍋なんて誰が作ってもさほど差は出ないと思いながら私は鍋から灰汁を別の器に移す。
「みーちゃん手慣れてるね」
「家で鍋やるとずっと灰汁取りしてたから…しかも2箇所で…」
「2箇所?」
「リビングでみんなが食べてる大きい鍋と部屋に閉じこもって1人だけ小さな鍋で自分の部屋のこたつぬくぬくしながらゆっくりマイペースな食事をしてた誰かさんの鍋の灰汁取り…」
「ごめんなさい…いつもありがとうございます…」
私が若干刺を持たせた言い方をすると妹は申し訳なさそうな表情をする。
「いいよ。気にしないで…それに、私、みゆと一緒に食べてたからどっちかと言うと大人数で鍋を囲んでいるのに誰も灰汁取りをしないやつらの方が手間かかるしね」
私と妹は小さな鍋で妹の部屋で食べていたからよかったが…リビングでは肉の争奪戦だ。なので、誰も灰汁取りをする余裕がなかったりする。
「みーちゃんの家楽しそうだねぇ」
「まあ、退屈はしないと思うよ。あ、そろそろ出来たから食べようか」
「やったー」
「みゆ、ちゃんと野菜も食べなよ」
「みーちゃん、お姉ちゃんじゃなくてお母さんみたい」
「えー何それ」
「ママーみゆの分よそって」
久留美ちゃんの冗談に乗り、妹がママと言いながら器を私に渡してくる。やばい…妹にママって呼ばれるの…ありかも……
「みーちゃん、どうしたの?急にニヤニヤして…」
「え、あ、うん。なんでもないよ」
妹にママと呼ばれて興奮していたとは言えない。私は妹から器を受け取って、妹の器に適当に白菜と豚バラ肉のミルフィーユ鍋をよそってあげる。何故、ミルフィーユ鍋にしたかと言うと、見栄えがかわいい。と言うのもあるが…妹がね。普通の鍋だとお肉ばかり食べるから…ミルフィーユ鍋ならバランスよく食べられる。妹の栄養バランスを考えられる私ってめちゃくちゃいいお姉ちゃんだよね。
「みーちゃんまたニヤついてるよ」
「お姉ちゃん…今日、どうしちゃったの?」
久留美ちゃんと妹に変な目で見られた私は我を取り戻す。やばいやばい。とりあえず、器を妹に返して、久留美ちゃんの器にも適当によそい、自分の器にも適当によそう。
「「「いただきます」」」
3人で仲良くいただきます。をして、食事を始める。いろいろゆっくりお話をしながらゆっくり鍋を摘むの最高に楽しかった。なんか、大学生になって下宿生活してる感を味わうことができたような気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます