第30話 私と好きな人(先輩)とパート練習
「こう君…みことちゃん、お疲れ様……」
今日の大学の授業が終わり、私がこう先輩と練習をしていると少し遅れてゆめ先輩がホールに来てくれた。大人しそうでかわいらしい女性、それがゆめ先輩の印象で、その印象通りの人だった。
「ゆめ先輩、パート練習お願いしていいですか?」
「えー、私は今パートリーダーじゃないからパートリーダーのこう君がパート練習は指揮するべきだよ」
「えー、そんな…僕なんかじゃできないですよ…」
「だめだよ。こう君も、もう先輩でパートリーダーなんだから…ちゃんとパート練習できるようにならないとだよ」
「そうですけど…やっぱり、ゆめ先輩にまだ…いろいろ教えてもらいたいです……」
こう先輩はゆめ先輩に泣きつくように言う。ゆめ先輩にいろいろ教えてもらいたい。この言葉から、こう先輩がゆめ先輩をどれだけしたっているかがよくわかった。
「わかった。じゃあ、今日は私がパート練習するから、次はこう君ね。交代でやろう」
「次も来てくださるんですか?」
「………みことちゃんには話した?」
こう先輩の次も来てくださるんですか?の一言に、ゆめ先輩は反応した。去年のこと…だろうか。
「はい。話しました…黙っておくことは……できなかったです」
「そっか…ありがとう。話してくれて…私さ、みことちゃんが何も知らずにさ、後輩ができたって理由でこう君といきなり仲良くする。って虫がいいかな…って少しモヤモヤしてたんだ。みことちゃん…」
「はい…」
「まだ…私とこう君は……完全には仲良くできないかもしれない。だから……ごめんね。先に謝っておく」
「大丈夫です。私は、一昨年とか、去年のことはよくわからないので…これから、三人で…頑張りたいです」
「こう君……」
「はい?」
「みことちゃん…めっちゃいい子だね。よく、チューバに引き抜いた」
ゆめ先輩は私の頭を撫でながら言う。こんなかわいくて優しくて、めちゃくちゃいい子ちゃんな後輩が欲しかったんだ。と……
それを聞いたこう先輩は複雑そうな表情をしていた。反応に困る。と言うような表情をしていた。
「じゃあ、さっそく基礎、やろうか。しばらくは三人でずっと基礎やるよ。こう君は少し退屈かもしれないけど、みことちゃんがチューバになれるまで二人で支えるよ。みことちゃん、わからないことあったら私かこう君に聞くこと」
「いや、僕なんかじゃ…」
「こう君、ずっとほったらかしにしていた私が言えないけどさ、こう君は上手いよ。ちゃんと上手くなった。だから、自信持って…」
ゆめ先輩に言われてこう先輩は照れていた。嬉しそうにしていた。
こう先輩の表情を見て…羨ましかった。こう先輩にこんな表情をさせてあげられるゆめ先輩が…
その後、三人でパート練習した。
こう先輩とゆめ先輩の間に、少し距離を感じたりもするが…楽しかった。
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