第16話 私の天使(妹)のお願い
「じゃあ、みゆちゃん、また今度一緒に練習しようね」
ユーフォの先輩が天使(妹)に優しく言うと妹は嬉しそうに頷いた。
「一応、コンクールとアンコンは出れないけど、大学祭や定期演奏会、施設などの演奏会なら本番も出てくれて構わないからね」
「出れるくらい上手くなれるように頑張ります」
「うんうん。ユーフォ今は私しかいないからみゆちゃんが入ってくれて心強いよ。よろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします」
妹と先輩のやり取りを見てて私は本当に嬉しくなってきて泣きそうだった。ずっと人と話したりすることを怖がっていた妹がこんなに楽しそうに人と会話している。
きっかけを作ってくださった先生や、受け入れてくださったこのサークル、そして吹奏楽とユーフォニアムに私は感謝した。こうやって少しずつ妹が人と関われるようになってほしいなと姉として私は思った。
「みゆちゃんって基本的にはみことちゃんの家にいるんだよね?」
「はい。私が授業やバイトの間は家に居させます。サークルがある日は授業終わった後に一回帰ってまた登校する感じです」
「そっか、みゆちゃん、もっとユーフォ吹きたい?」
ユーフォの先輩に尋ねられて妹は首を縦に振る。ユーフォ吹きたい?と聞かれて妹の目はキラキラしているように見えた。
「じゃあ、みことちゃん、申し訳ないんだけど私の授業の空き時間や授業後に私が個人練習する日にみゆちゃん借りていい?」
「え、でも、私が一緒にいられるかわからないので…」
ちょっと怖かった。私が側にいないところで妹を人と関わらせることが、だが、そんな不安を薙ぎ払うように妹は私に笑顔を向けた。
「お姉ちゃん、みゆ、もっとユーフォ吹きたい。いっぱい練習してお姉ちゃんみたいに吹けるようになりたい」
妹にこんな目で訴えられたら私に止めることなどできない。それに妹がこうやって一生懸命やりたいことを見つけることができて嬉しかった。
「ご迷惑でなければ妹をよろしくお願いします。ただ、もし何かあった時はすぐに私に連絡していただくようにしていただきたいです」
「うん。それはもちろんだよ。みゆちゃんと練習する前後はちゃんとみことちゃんに連絡するしちゃんとみゆちゃんの送り迎えもするからさ」
「え…そこまでしていただくわけには…」
流石に送り迎えまでしていただくのは申し訳ないと私が言うと大丈夫大丈夫、私、車通学だからここら辺のアパートなんでしょう?それなら全然問題ないよ。と言ってくださったので大変申し訳ないが妹と先輩が2人で練習する時はお願いした。
そんなやり取りをした後、先輩に妹をよろしくお願いします。と言い私と妹は帰路についた。
アパートまで歩いている途中、妹が今日起こったことをずっと嬉しそうに話しているのを聞いて私は嬉しさのあまり涙が溢れそうになったが必死に堪えるのだった。
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