第17話 私と天使(妹)のマウスピース
「お姉ちゃん、みゆ、お姉ちゃんのユーフォ聞きたい」
私と天使(妹)がサークル体験に行った日の夜、夕食を食べ終えてグダグダしていたら妹が私に言う。
「いいよ。今度聞かせてあげる」
「今聞きたい」
妹は不満そうにほっぺたを膨らませて私に言う。かわいいなぁ…
「お姉ちゃん、海で吹いてよ」
海か…たしかに、歩いてすぐのところに海はある。人通りが少なく、周りに民家がない場所はたしかにあった。あそこなら吹いても近所迷惑にはならないだろうな…と思う。
「ねー、お姉ちゃん、お願い」
妹が甘えるような声でお願いしてくる。ああ、めちゃくちゃかわいい。
「吹いてくれないならまたこの前みたいにくすぐっちゃうよ。いいの?」
妹はそう言いながら私の真横にやってきて私の弱いところに手を置く。そして妹が少し指を動かすだけで私は、ん…と声を出してしまった。
「ほら、お姉ちゃんどうするの?大人しく海行く?それともこのままいじめられたい?」
妹は指を動かす速度を上げて私に尋ねる。私はわかった。海行くからもうやめて…と弱々しい声で答えることしかできなかった。
「えへへ、みゆにいじめられてかわいい声出したりかわいい顔するお姉ちゃん見てるのも楽しいけどまた今度にお預けだね」
「お願いだからもうやらないで、ほら、さっさと行くよ」
妹にやられると気持ち良すぎるから…とは言わずに私はユーフォを持って玄関に向かう。妹は慌てて私に続いて部屋を出る。
そして妹と海まで歩いて海沿いにある階段の上に座り私は楽器ケースから楽器を取り出した。マウスピースを楽器に付けて私はマウスピースに口をつける。
そして、軽く音出しをしてから軽く曲を吹く。吹いた曲はユーフォのメロディが楽しい曲を何曲か吹いた。妹は満足そうに私の音を聞いている。
「みゆも吹く?」
「吹く!」
嬉しそうに答える妹に私はユーフォを渡す。妹が私のユーフォをそっと受け取ってユーフォを構える。
「ねえ、お姉ちゃん、このマウスピースじゃなくて、昔お姉ちゃんが使ってたマウスピースない?」
「え、あるよ」
「そっちのマウスピースで吹きたい」
「いいよ」
私はユーフォに付いていたマウスピースを外して私が昔使っていたマウスピースをユーフォにつける。妹は私が昔使っていたマウスピースで練習していたみたいだからそっちの方が吹きやすいかなと思ったからだ。
マウスピースを付けて妹はさっそくユーフォに息を吹き込む。まだ、音は安定していないが初心者にしては上出来だ。
「ねえ、みゆ、そのユーフォ、みゆが使ってあげてくれないかな?」
「え…嫌だ」
妹は即答した。私はチューバを吹く。だったらユーフォは妹に託したいと思ったのだが…
「だってみゆ、お姉ちゃんとユーフォ吹きたいもん。お姉ちゃんと練習したり教えてもらったりしたいもん。だから、このユーフォはお姉ちゃんが持っててよ」
妹の言葉を聞いて私は納得した。それと同時に私はチューバを吹くと決めたが、ユーフォの練習もちゃんとしないとな…とも思った。私は妹の憧れのユーフォ奏者でもいたいから。
私がわかった。と答えると妹はそのかわり…と言いながらユーフォからマウスピースを外す。
「このマウスピースだけ私に頂戴、私、このマウスピースでユーフォ吹きたい」
「うん。いいよ。大切にしてあげてね」
「うん。ありがとう」
私は昔使っていたマウスピースを嬉しそうに妹は見つめる。私が、初めて自分のマウスピースを買った時のことを思い出して懐かしい気持ちになる。
「そろそろ帰ろうか」
私がそう言うと妹はまだ吹きたいと言うような顔をしたがかなり遅い時間になっていたのでわかった。と言いユーフォを私に返す。私はユーフォをケースにしまって妹と一緒に帰った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます