第12話 私と天使(妹)の悩み事






「お姉ちゃん、サークル入るの?」


アパートに帰ってからサークルの説明が書いてあるプリントを見ていたら天使(妹)が私に尋ねてくる。


「うーん。悩んでるんだよね…」


ぶっちゃけサークルに興味はあったのだが、バイトがあったり、サークルに行って遅くまで妹をアパートで一人にさせていいのかといろいろ考えるとサークルに入らない方がいいのかもしれないと思っていた。


「みゆね。お姉ちゃんのユーフォ聴きたい。ユーフォ吹いてるお姉ちゃん大好きだよ」


私が悩んでいるのを察してか妹は私にそう言ってくれる。本当に優しくて気がきく天使だなぁ…


私は部屋の隅に置いてある楽器に目を向ける。下宿し始めた頃は妹と暮らすことになるとは思ってなかったので吹奏楽サークルに入る気満々で楽器を持ってきていた。


「みゆ、もし、お姉ちゃんが帰ってくるの遅かったら嫌?」

「うーん。お姉ちゃんがいてくれたらみゆは嬉しいけど、みゆのせいでお姉ちゃんが何かを我慢しないといけないのは嫌だ。だからさ、吹いてよ。ユーフォ」


妹は笑顔で私に言ってくれる。私はありがとう。と妹に言いサークルに入ることを決めた。




翌日、新入生オリエンテーションがあった。全体で2時間ほどオリエンテーションがあり、その後はゼミ単位での細かい説明があった。


1年生のゼミのクラスはランダムで行われていて担当の先生の指示に従い教室を移動した。私が所属するクラスは15人ほどみたいだ。


教室を移動してまずは自己紹介から始まった。名前や出身地、入りたいサークルなど差し支えのないことを言い私の自己紹介は終わった。その後クラス単位でのオリエンテーションが終わり解散となった。


「君、吹奏楽サークル入りたいって言ってた子だよね?」


解散になった後、担当の先生が私に声をかけて来た。名前は確か黒田先生、パッと見は優しい感じのおじいちゃんって感じだ。


「はい。まだ、ちょっと悩んでいますが興味はあります」

「そうなのか。私、吹奏楽サークルの顧問やってるから興味あるなら是非体験来てよ。悩んでいるって他のサークルにも興味あるのかな?」

「いや、サークル入るなら吹奏楽サークルって決めてるんですけど」

「他に何か悩む要素があるのかな?もしよかったら相談乗るよ」


先生はそう言って椅子に腰掛ける。私はありがたく悩んでいることを相談してみることにした。妹と一緒に生活していること、生活費のためにバイトしないといけないこと、妹を長い時間一人にしていいのか悩んでいること、それらを全部話し終わると先生は即答で答えてくれた。


「なるほどね。バイトとサークルの掛け持ちは心配する必要ないと思うよ。実際下宿生でバイトとサークル掛け持ちしてる学生なんてたくさんいるしね。妹さんに関しては実際にあったりしたことないからどんな様子かわからないけど、君といると安心できるなら妹さんも一緒にサークル参加すればいいんじゃないかな?」

「え?」


先生の回答はめちゃくちゃ意外なものだった。先生曰く、見学や一緒に楽器吹くくらいなら全然問題ないらしい。一度妹に話してみたらどうだろうと勧めてくれた。もし、よければ今日この後ある体験も妹を連れてきていいと言ってくれた。もし、妹も一緒に体験に来るならサークルの方々に話を通してくださるということだったので、先生のご好意に甘え、一度帰って妹に話してみますと返事をした。そして先生とLINEを交換して妹と話した後に連絡させてもらうことにした。




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