英雄の息子が英雄とは限らない！

第120話到着せしもの

「撃て！後ろに半数を向けろ！」

敵は半数を此方に、半数をケスラー中将の部隊に向けることで打開しようとしている。用兵家としては三流以下だが実際、これは現在使える物だ。だが、無意味だ。

「総員、戦車隊の攻撃の後、歩兵隊が前進せよ」

「「「yes,commander」」」

少将の命令を歩兵に伝える。そして、ソルジャーとしての仕事をしに行くか。

「バロ、刀はどうした？」

「折れたよ、カーヴィー師。だが、ダガーならある」

「シュウさん！バロも行くのか！なら、俺も」

「マキウス、邪魔は止しましょう。私達は、この戦闘に参加はできないのでから」

弾幕の中を駆け抜け、俺とカーヴィー師は互いにダガー、刀を構えている。俺は魔力をダガーに流し、ダガーに魔力の刃を追加する。

「クロスカッター！」

一時的に重さの無い刃が無限に伸びる。弾丸や、剣をもってしても防ぐことは不可能だ。

「ぐぁあ！」

「腕が！うでがぁ！」

胴体を斬られた敵も、即死する訳ではない。苦しみ、大量の血を流しながら死んでいく。

カーヴィー師も、九重一刀流の極技を放っていく。

「九重一刀流火の型火炎車」

火炎を纏った 刀で、円を描きながら敵陣を切り裂いていく。焼かれ、斬られた死体は既に形を留めてはいない。 一太刀で、そして瞬時に命を刈り取る。俺とは違い、苦しみは与えていないようだ。

「何なんだ、貴様らは！」

「Sランク遊撃士シュウ・カーヴィー。覚えておいて貰おう」

「ソルジャークラス1stバロ・ランバース。覚えても無駄だ。これから死ぬんだからな」

俺とカーヴィー師は互いに顔を見合わせ、「こいつは」と言った表情をする。そして、

「九重一刀流風の型風切羽」

風切羽。鳥の風切羽の様に風を切る速度で敵を斬る一撃必殺の技。それを峰でやるとは。

慈悲深いが、俺には関係が無いことだ。

「ダガーはやめだ。ブーステッドソード」

ポシェットから大剣が出てくるなどと誰が思っただろうか、敵は明らかに怯えている。

「ブースターオン」

大剣で凪ぎ払う瞬間、大剣の後部から激しい加速が起こる。通常なら、大剣を離してしまうほどの速度。だが、俺には無意味だ。龍化は失われても、龍の力は失われていない。俺は今、龍の筋力、視力、聴覚、嗅覚、知識を持った人間なのだから。

「セィヤァ！！」

先程までの斬るではなく叩ききる。人間は叩ききられただけじゃなく、その風圧で吹き飛ぶ者もいる。

「蒼天魔斬」

蒼く暗く光る魔力を纏った大剣。俺はそれを構え、跳躍した。

「撃て！撃て！」

空中では避けようが無いが、ブーステッドソードを起動し、更に空に上がる。そして、ブースターをフルパワーで地面に向け、ブーステッドソードを振り下ろす。

「ハァァァァァァ！」

その時、蒼く暗い閃光が地面を砕き、激しい衝撃が両陣営を直撃した。