第119話ディアス・ミュンベルガー
「狙撃兵!」
「工兵!移動式バリケードを設置!」
「yes,commander」
ケスラー閣下の指示の下、我々の攻勢が始まった。だが、正面戦力は俺達歩兵連隊3千。ケスラー閣下直属の機甲部隊4百だけだ。他はシールド戦車や防壁戦車のみ。防壁戦車は歩兵支援の為に造られたバリケード等を設置する工作戦車だ。ただ、120mm機関砲以外に武装は着いていない。防御力はあっても、肉壁以外の何物でもない。
「パンツァーファウスト!」
「防壁戦車を守れ!」
私は即座に指示を出すが、この轟音の中一体どれだけに聞こえたのだろう。積めてきた敵に対して、何人かが発泡しているが、倒れる様子はない。
パシュゥ
何かが飛んでくる音がして、防壁戦車は破裂した。
「ぐぁあ!」
爆発に巻き込まれ、耳がおかしくなったようだ。先程から、キーンとけたたましい音が鳴り響いている。よろめき、平衡感覚すら保てない状況で戦場に訳も解らず立ち尽くしていた。
「大佐!」
「!」
誰かが俺を押し倒した。
「大佐!大佐!」
「うぅ!ホリーズ中佐、バリケードの設置は完了している。歩兵連隊、前線を押し上げるぞ!」
「「ウォォォォォォ!!!」」
ホリーズ中佐が居なければ俺は死んでいた。彼女には、感謝しなくてはな。
「ディアス大佐!」
「なんだ!」
「北の方向より、所属不明の一団が襲来。援軍にしては少なすぎます!」
「ならば、敵の別動隊だ!撃て!」
案の定だ。迫撃砲を用いながら、此方の押し上げた前線をジリジリと下げられる。
「がぁ」
「撃て!魔法も使え!」
簡単で明確な命令だ。多種多様な攻撃魔法が敵陣に向かって放たれ、敵からも魔法の反撃を受ける。
「ディアス大佐、包囲が完成したぞ。歩兵大隊は一度後方へ下がれ!全軍第2段階へ移行、射撃により包囲殲滅せよ」
「ケスラー閣下!」
ケスラー閣下の敷いた陣形はV陣だ。別動隊の為に凹陣にできなかったが、ここから動く。
「第3段階へ移行せよ」
閣下の命令により、私達は陣を◇に敷く。中には敵の大部隊が入り、混乱し、全方位に攻撃を仕掛けている。私も、指示の下自分の配置場所へ移動した。
「流石、アレクサンドル閣下ですね。こんな陣形、私は思い付きませんでした」
魔法を放ちながら、ホリーズ中佐が話すが、私はそう思わなかった。
「いや、このダイヤ陣は恐らくだが苦肉の策だろう。閣下もあの位置の伏兵は想定外だったのだろう」
「何故です?ですが、包囲陣は完成しています」
「この平野で別動隊の移動がばれない訳がない。伏兵は最初から居たんだ。恐らくだが、黒い布か何かを被りながら移動して哨戒部隊の目を誤魔化したんだ。このダイヤ陣。凹陣よりも、かく部署が薄くなっているだろ?もし、一転突破の紡錘陣形を組まれてみろ。瓦解するぞ」
「しかし、敵は敗走寸前です。我々が負けるはずが」
「黙れ!」
俺は喋るホリーズ中佐の口をふさぎ、敵の動きを見る。
「不味い!撃て!撃ち続けろ!」
悪い予感は的中だ!敵はダイヤの斜め上の部分に一転突破を仕掛けてきた。俺達はそいつが少しでも、成功率を下げるようにただ撃ち続け頭数を減らすしかない。
「包囲陣、、、突破されました」
ホリーズ中佐は報告しながら驚愕した表情を浮かべている。すると、司令部から新たな命令が下された。
「伝令!凹陣へ陣形を再編成せよ」
弾もだんだん尽きてきた。だが、やるしかない。
「総員、移動!凹陣を敷きに行く!」
「無茶です!」
「無茶でもやるんだよ!俺達は軍人だぞ!」
ホリーズ中佐は勝手にしろとでも言いたかったのだろう。だが、苦々しい顔をしたまま、命令に従っている。
「!援軍だ!援軍だぞぉ!」
誰かが叫んだ。それは歓喜の叫びか、失意の叫びか。答えはすぐに出た。1万人の軍勢が敵に向かって射撃と法擊を加えていった。負傷者を装甲車にのせ、後方へ下がらせてくれる。そして
「全軍、半月陣」
半月陣により、あまり被害の無い部隊が敵を抑えることになり、俺達は安堵した。そして
「本隊が来たぞ!」
又、最高の援軍が到着した。
「勝った。勝ったぞ」
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