第118話アレクサンドル・ケスラー

「ケスラー中将、オータム砦制圧作戦の中継地として軍需工場地帯で一度、合流をしたく」


「ふむ」


ワシは録音通信を聞き終える前に、端末を閉じた。


「オータム砦」


何度もその名前を反芻する。陛下達が軟禁され、そして王都の次に戦力の集まっている地点。それを2万で攻めるとは、、、


「若いの」


作戦立案者はバロ・ランバース大佐。一度、補給の為にここに寄ると言うが、、、一度、叱るべきかもしれんな。


「ふむ、ところでミュンベルガー大佐。彼処に見える一団を貴官はどう思う?」


「閣下、小官が思いますに敵。ではないかと」


「はぁ、アイ中尉。大佐以上の幕僚を集めてくれ、作戦会議を開く。ディアス大佐は連隊を率い、警戒に当たってくれ」


「「yes,commander」」


良い返事を聞き、ワシはすぐに幕僚会議を開いた。


「敵が来ているのであれば、迎え撃つ必要があります。一様、外壁も生きてはいます。防衛戦ならば、戦えるのでは?」


「しかし、閣下の御言葉を忘れたか!味方の増援がもうすぐ到着する。ならば、敵の挟撃も可能ではないか!」


「しかし、敵の頭数が解らん。偵察機からは1万を超えると伝えられたキリだぞ!」


会議は白熱しておる。決めねばならん、守るか、攻めるかを。


「敵、司令部から通信。ケスラー閣下を呼び出しています!」


「いいがします?閣下」


「ワシが出る。繋げ」


会議実のモニターに映像が映し出される。そこには、ターシェ軍の軍服を羽織り、此方を見下す卑下た瞳の男が映った。


「アレクサンドル・ケスラー閣下。我々はターシェ軍特務師団クリミナル。私は指揮官であるスタンレー・コール元帥だ。抵抗は無意味だ。賊軍ども降伏せよ」





「「あの汚物が!」」


ワシよりも先に幕僚達が叫んだ。まぁ、解らんでもない。コール家は公爵家でありながら、王族からも嫌がられておるからな。


「うって出る。参謀長。この作戦は可能かね?」


「閣下。御見逸れしました、私は通達し徹底させます。では、閣下」


「うむ、総員出撃だ。」


出口は砲火に晒される。だが、それは通常の出口のみだ。


「開始せよ」


出口が見られているのなら、出口を作れば良い。ワシは爆破しても外壁に問題の無い4箇所を身繕い、戦車が通れる程の出口を作った。だが、勿論それだけでは駄目だ。敵の目を惹き付けておかねばならない。


「シールド戦車、前進せよ」


シールド戦車、一定時間防御魔法を展開する特殊車両であり、ワシはこいつを指揮車に選んだ。証明の出口からワシを入れた囮部隊を。そして、囮部隊が敵を惹き付けている間に挟撃する寸法じゃ。


「撃て!」


「撃て!戦車隊には常に3射交代を確立させよ。射撃地点は敵の歩兵大隊じゃ、本隊を狙うな」


敵の砲撃は無秩序に降りかかる。が、防御魔法が防いでいく。そして、一拍開けての砲撃の再開じゃ。敵は、歩兵をまるで使い潰しているようじゃ。シールド戦車の配置もせず、ただ降り注ぐワシ等の砲撃を受けさせる。


「無念だな、どうかワシ等を恨まんでくれ」


「ケスラー閣下!何故全線に!」


「おぉ、ディアス大佐か。敵、歩兵大隊は崩れておる。我々の挟撃陣が完成次第、殲滅に移るぞ」


こうして、ワシ等の攻勢が始まった。





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