第106話龍と息子の真実

「これは真実だが、お前にとっての真実とは違う。皆にも話さなかったがな、バロは自然死したのではない。マーリン・ランバースにて殺されたのだ」


「!」


「何を、、、」


「オリックス・ランバース。貴様は四つ子がどれだけ母胎に負担を強いるか解るか?マーリンはソルジャーといえど女性だ。肉体は男性よりも脆い。妊娠高血圧症候群をはじめとした妊娠リスクに、魔力欠乏症。これはわかるだろ?」


「まさか、子供に魔力を吸いとられマーリンは死ぬ寸前だというのか!」


魔力欠乏症、ターシェ王国の国民は魔力を有している。魔力は時間と共に回復するが、それが間に合わない時がある。妊娠中だ。妊娠中、胎内の子供は無意識に魔力操作を覚え母体から魔力を吸いとってしまうのだ。そして、魔力のない状態が続くと人は昏睡状態に陥り、最悪の場合死に至る。


「お前は理解していたか?」


「ふざけるな、ただの魔力欠乏症でそこまでの事はおきない!あったとしたら、お前がマーリンから魔力を吸いとっていたのではないか!?」


辻褄はあっているが、現実とあっていない。


「そうだな、普通はそうだ。だがな、魔力欠乏症での死亡事例は過去に何度も存在する。多胎妊娠の場合、そのリスクは格段に上昇する。それに、我ら男が妊娠を語れるか?その苦痛はマーリン本人しか理解できんぞ」


「ぐっ」


「お前の事だ。君の気持ちは解る。や、もうすぐだよ。なんて言葉を吐いていたんだろ?馬鹿だな、女性に禁句だぞ」


「しかし、マーリンは笑っていた!笑っていたんだ!」


「はぁ、無駄話はこれ以上いらんな。本題に戻す。そこで、苦しみ抜いたマーリンは考えた。自身の負担を楽にする方法をな。だが、我は妻がこれをしたら許しただろう。お前はわからんが、、、まぁ間引きをしたんだ。四つ子に無理矢理魔力を送り、それに適応し、反応するかで。無理なら、その子は死ぬだけ。苦しみも和らいでくれる」


「、、、て」


「母さん、僕だけだった。母さんの魔力、それを管理出来ずに死んだのは。ノア、エレナ、ヘレンは管理し、生き残った」


「、、めて」


「バロは、、、生まれる前に実の母親に」


「止めて!」


「「「殺されたのだ!!」」」


オリックス・ランバースは言葉が出ないと言った様子で妻をみていた。マーリンは涙を流し、ただぶつぶつと独り言を述べるだけだ。


「辛かったの、苦しかったの、私は、、私は悪くない。苦しくて、助けて、、、欲しくて、それで」


「だから、僕が産まれたとき驚いた。魔力を意図的に切った子供が生きていたこと、そして魔力が一定以上あったことに」


「、、、そう、オリックスごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい」


マーリン・ランバースはただ謝罪を述べている。許されざる、謝罪、今まで自分の子供を一時の過ちで殺したことを悔いていたのだろう。優しい女だ。


「オリックス・ランバース、それでも我と戦うか?それでマーリン・ランバースの気がはれると?」


「、、、無理だろうな。だが、お前が厄災である限り、俺は、俺達夫婦にはお前を討伐する義務がある。マーリン、立て。君の息子殺し、俺も共に咎を受けよう」


「オリックス」


精神的に殺す。そのはずだったのだが、マーリン・ランバースは泣き止み、オリックス・ランバースには決意の表情が浮かんでいる。

予想外だが、人間はこんな生き物だ。


「さて、、、では僕は厄災としての力を一切使わずバロ・ランバースとして親殺しをの咎をうけてやるよ。かかってきな」


俺はダガーを構え、言い放った。


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