第87話争いの時

ターシェ王国王城


「そうか、ミヒャエルは死んだか」


「はい、恐らくバレタニアからの軍勢ではなく盗賊か何かでしょう。金目の物は奪われ、体は焼かれていました。閣下、どうなさいますか?」


「殿下にお伝えしろ、ミヒャエル男爵はセリエ第二王女と会談より帰還するさい何者かに殺害されたと。あのガキの事だ、勝手に思い込みを起こすだろう」


「はっ、ではその様に」




私が王位継承の儀に向け、官僚らと会議をしていると、重い扉がギィと音を立てて開いた。そこから現れたのは私の息子であるディーン・ラ・ターシェだ。


「父上、父上!この書状を見てください!」


「ディーンよ、私はまだ会議中なのだが」


ディーンは平凡だが、今は戦時中ではない。このような暴挙は例え皇太子でも許されぬ。平凡と言うが前例主義者ではない。ただ、思い込みが激しい一面があるだけだ。


「ミヒャエル・グッシード男爵が何者かに殺害されました」


「何と、、、」


ミヒャエル男爵は家族愛溢れ領地持ちではないがディーンの家庭教師も勤めた逸材だ。それが殺されるとは


「ミヒャエル男爵の死報が届く前、私の下に早馬でこのような文書が届いたのです」


拝啓 我が敬愛なる王太子殿下

この文が届く頃、私の命は既に無いでしょう。私は狙われています。セリエ様にお話を聞きにバレタニアに向かいましたが、監視されています。私が掴んだ情報をお伝えします。セリエ様はハーファシー卿と共謀し、殿下の王位に異を唱えんとしています。願わくば、この文が殿下に届くことを。

ミヒャエル・グッシード


「なんと」


ディーンはおかしい、その用な情報をよりにもよって官僚会議中に音読するなど!ここにはセリエの元支持者達も居るのだぞ!


「私は、、、東バレタニア街道にてミヒャエルの部下である騎士を捕獲し、馬車を破壊するバレタニアの近衛部隊を見たという目撃情報も入っています!どうか、派兵の許可を」


「あり得ない!いくら殿下と言えどセリエ様を陥れよう等と、王族の風上にもおけませんぞ!」


「黙れ、殿下が嘘を申すというか!」


「何を!」


これならばさっさとオリックスの息子と結婚させておくべきだった。セリエの王位継承権は第二位、不味いぞ。これでは、、、


「陛下、大変です。兵が!」


「まさか、ディーン貴様!」


「父上、私は恩師を殺され赦せる人間ではありません!」


「近衛兵!私を侮辱した官僚は牢へ。国王陛下と王女陛下を保護しオータム砦に護送しろ!」


「「は!」」


「よせ!ディーン、止めるのだ!」


「父上、もう遅いのです。セリエは私の妹ではない。逆賊です」


「ディーン!!!!」


私は近衛部隊に捕まり、オータム砦に幽閉された。愛する妻と、数名の愛人達と共に。


「あなた、、、ディーンは」


「ディーンよ、、、なんて愚かな」


セリエには最凶の護衛がついている。奴の事だ、ディーンだけでなく何人もの人間が血の海に沈むだろう。私が願う事は1つ、民にでる被害が最小限になることだけだ。



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