第53話カール市長

ホテルからリムジンに乗せられ、市庁舎へと到着した。時間はだいたい7時を回っている。夜の活気が犇々と伝わってくる。


「こちらへ。」


役員に案内されるまま、応接間へと通された。そこには防音加工、耐爆機構が施されており、避難場所としての側面も有るようだ。


「武器はお預かりします。」


ここまで案内した男がそんな事を言ってくる。何故他国の要人の護衛から武器を奪おうとするか、正直解りかねる。


「我々が武器を所持していると?」


「念のためです。」


「現在、装備している武器は何もない。」


「了解です、そちらの方も」


「解った。」


副長殿は短刀を男へと渡した。どうやら、護衛は彼女で僕は付き人か何かと勘違いされたみたいだ。まぁ、今の自分はネゴシエーター(交渉人)であるし、セリエが下手な事を言わなければなんとかなる。


「市長、お客様をお連れしました。」


「通しなさい。」


「皆様、どうぞ。」


案内人は入らない。外で護衛でもするのか?


「どうぞいらっしゃいました、セリエ王女殿下。お久し振りです。」


「えぇ、そうですね。カール・ルーファウス市長。」


顔合わせ、挨拶は終わった。次は此方だ。


「初めまして、カール市長。バロ・ランバースと申します。この度は、交渉の呼び掛けに応じて頂きいた事、感謝の意を。」


「えぇ、此方も中々面白い事だったので。」


「えぇ、」「そうですな。」


「「ハハハハハハ。」」


おかしい。場を和ませようとしたのに凍りついたぞ、まぁこれはこれで良い。


「市長、単刀直入に申し上げる。我々はフォレスタに土地が欲しい。」


「ほぅ、我々ですか?大使館が存在するではありませんか。それが不安で?」


「良いや、ターシェ王国としてではない。セリエ王女殿下の為である。貴方も、我が国の現状を理解しているだろう。」


「まさか、そこまで行っているのですか。」


「そうだ、セリエ王女を持ち上げ王位に着かせ、甘美なる供物を獲ようとする一派、そして第一王子派による対立が目立ち、つい最近はセリエ王女殿下に暗殺者も送り込まれた。そこでだ、自治州であるフォレスタに協力を願いたい。」


嘘だけど、本当の様に話せば本当になる。


「ほう、我々に協力を?するかしないかは別として、どんな協力をすれば宜しいので?」


「拠点を作るのを許可願いたい。」


「はぁ、拠点ですか?」


「そうだ、貴国との条約により軍の駐留は禁止されている。しかし、アドベンチャーの駐留は問題無いはずだ。私は近い内にアドベンチャークランを設立する。その拠点をある程度の値段で提供して頂きたい。我々の要求はそれだけだ。」


「ほぉ、私自身警備隊の軍事力を提供しろだったら、王女といえど摘まみ出す気でいましたが、、、しかしおかしいですな。建物なら不動産屋に行けばよろしかったのでは?わざわざ私の下へ来る理由が無いのでは?」


「そうですな。カール市長、これは本来貴方を通す理由はありません。しかし、我々の誠意を貴方に示せたのでは無いでしょうか?」


「ほぉ、そう言う事ですか。いくらアドベンチャーと言えど、数が集まれば面倒な事には変わりありませんしね。しかし、メリットがない。貴殿方は我々にそのメリットを示せますか?」


来た!


「貴方はこのセリエ王女殿下の誕生日パーティーに参加しませんでしたな。」


「、、、。」


カール市長は苦虫を潰した様な顔をしている。行けるか?


「私は、我々は、ターシェ王国からの圧力を消す事ができる。どうでしょう、カール市長、フォレスタの安泰の為に。」







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