第21話帰還したのも束の間、、、

「どうした?眠れなかったのか。」


「なんでもありませんわ。」


今朝、朝食の準備をしていると目に隈を着けた状態でルシエラールが起きてきた。


ぐー


「あの!これは、、、」


「気にしなくて良いよ。

僕もお腹が減っているからね。

ほら、丁度できたところだよ。」


「いえ、、、ありがとうございます。」


「それじゃ、一緒に食べようか。

感謝を込めて。」


「感謝を込めて。」


ルシエラールは言葉を発しながら僕の出した朝食を食べてくれた。


「ルシエラール、どうだい?」


「、、、美味しいです。あの、、、貴方の本当の姿はどちらですの?」


「、、、それは俺の事か?

それとも僕の事かい?」


「、、、えぇ、二重人格なのですか?」


二重人格と思われていると言うことは、

別人を演じきっていると言うことだ。

ソルジャーとしては、喜ばしいな。


「いいや、口調と雰囲気を変えているだけだよ。本当なら僕と言っているからね。」


「そう、ですのね。」


野営の道具をしまい、バレタニアの門へと向かう。もうすぐという時、目に見えて疲れているルシエラールに声をかけた。


「ルシエラール、もう少ししたらバレタニアに着く、もうひと踏ん張りだよ。」


「、、、ルシエラと呼んでください。ルシエラールは既にいませんので。」


「わかった、行くよルシエラ。」


ルシエラール、いやルシエラは疲れが見えるが精一杯の笑顔を僕に見せた。


「良かった、南門だ。」


バレタニアは相変わらずの人通りの多さだ。

入場者として列に並び、手続きをしてバレタニアに入った。


「ランバース様ではありませんか?

以前、マリン様をお助けして頂きありがとうございました。貴方の事はバレット様から良く。、、、帰って来たら屋敷に早急にと。」


「、、、何があった。」


「申し訳ありません、そこまでは。

、、、次!」


どうやら報酬を貰って管理人生活とはいかないようで、本当に面倒ですよ。


「ルシエラ、ハーファシー家に向かいます。、、、跳ぶぞ口を閉じていろ。」


「!!!!」


「跳躍、追い風。」


ルシエラを抱え風魔法と肉体強化魔法を周囲に展開する。脚部を強化することで跳躍力をあげ、さらに風魔法で一度に移動する距離を底上げする。


「キャァァァァァァァァ!!!」


屋根を足場に空を跳ぶ。

まぁ、それでも民家二軒分しか跳べない訳だけど。歩くよりも速い。

ハーファシー邸には直ぐについたが、抱えていたルシエラが涙を流しながら俺にくっついていた。どうやら怖かったようで、俺から離れようとしない。


「地面ならソコだ。降りろ、邪魔だ。」


「わ私に対して、このこ」


震えて呂律が回っていないな。

仕方がないので降ろすのを止めて頭を撫でながら屋敷に入った。その時の姿を見た衛兵が混乱していたな。まぁ、仕方がないけど。


「バロ・ランバース。ハーファシー家当主バレット・ハーファシーの命により、参上した。」


衛兵にそう答えると直ぐに案内役のメイドが現れた。俺を見たとき反応に困る表情をされたが、仕事は完璧にこなすようだ。


「、、、ランバース様、お疲れ様でした。此方にて我が主がお待ちです。」


「ラン、、、バース?」


ルシエラが何か考えているようだが、俺はそれよりもこのメイドの方が気になった。

誰かに似ている。


「着きました。」


結局誰かは解らないまま応接間に着いた。

さて、また面倒事かな。




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