第19話令嬢ルシエラール

伯爵邸の中に入ると、待っていたのは衛兵ではなく着飾った令嬢だった。


「貴方が襲撃者ですのね?そう警戒なさらないで、少しお話しましょう。」


「、、、。」


この女性以外に邸には気配がない。

まるで、最初から人がいないかのように。


「、、、貴方は御父様を殺しに来たのでしょ?此方へいらして。」


胡散臭さも感じる筈なのに、俺はこの女性に案内され個室へと向かった。


「これは、、、」


そこには俺が殺そうとした伯爵一家が無惨にも、、、まるで人形のように遊ばれて殺されていた。5歳になるかならないかの子供がまるで、自分の遊び道具であるかのように腕に杭を打たれ、磔にされ、、、さらに目元に涙の流れたような跡がある。他の家族も同じように、、、悪人だがこうなってみると無念だな。


「生きながら、、、こんな子供に。」


「、、、私、御父様や御母様が死ぬのはどうでも良いですが、妹を殺した存在を赦したいとは思えませんの。」


俺はこの女が殺したようにも思えた。

力があれば、誰にでもできる。


「ふふっ、貴方は私を疑っておいでですのね?」


「違うのか、現状からお前が殺したと思えば簡単だ。しかし、俺にとって誰が殺そうが無意味だ。死んでいるのなら、報酬も俺が貰えるしな。」


「やはり、父を殺しに来た暗殺者でしたか。、、、そう言えば名乗っていませんでしたわね。ルシエラール・アルカサルと申します。」


ルシエラール、アルカサル家長女。

俺はその顔を知っている、殺しの依頼を承けたとき、アルカサル家全員の似顔絵をセリエから見せられてもいた。確かに、ルシエラールそっくりだ。しかし、ルシエラールは王都の学園に学生としているはずだ。


「どうして私がここにいるか、そう考えていらっしゃいますね。、、、私、人の心が読めますの。暗殺者様に話したのが初めてですけどね。さて、私はですね、妹を回収に来たのです。私にとって家族とは歳の離れたこの妹以外におりません。、、、今日が妹の誕生日だったのです。私が帰宅したのは今朝ですが、邸は既にもぬけの殻。使用人も全員いませんわ。衛兵が残っていましたが、先ほど全滅したようで。」


「ほぉ、所でお前は俺と話していて何のようなんだ。個人的に残りの衛兵どもが邸を取り囲む前に逃げたいのだが。」


「貴方は、強いんですわよね。その、私も連れていって下さらない?」


「何故だ、連れていって俺に何の特がある。面倒なだけだろ。」


「、、、復讐したいのです、妹を殺した奴に。御願いします、連れていって下さい。お金ならあります。邸の隠し金庫や調度品をお持ちして頂ければ、数千万ギルにも及ぶはずです。それ以上に、私の身体も捧げることも厭いません、、、どうか。」


正直、目の前の女の体型はまだ、顔にまだ少女と言った幼さを感じる面もあるが肉体だけを見れば良いプロポーションを持っている。

そんな俺の視線を感じたのかルシエラールは頬をほんのりと紅く染めながら、もう一度言葉を発した。


「、、、私を、好きにして構いません。」


「、、、言質は取ったぞ。」


「ん!?!」


ルシエラールの背と腰に腕を回し、逃れられないように口付けを行う。暴れまわろうとするルシエラールだったが、力の差が解ると俺に身を任せた。


「んっ、、、今はこれだけだ。

さて、ルシエラール隠し金庫に案内して貰おうか?」


「えっ、あ、はい。」


顔を真っ赤に染めたルシエラールに案内され、全ての調度品や隠し金庫、ついでに横領や人身売買の証拠等を回収していった。調度品に関しては宝石類、更に盗品と思われる美術品も存在した。


「宝石類は売り付けて、美術品は確認してから返却で良いか。」


また、服と家具も奪わせて貰った。

ドレスやスーツ、やはりと言うべきか大量にある。食器類、包丁等の日用品も一級品質。

かなりの量が手に入った。


「、、、囲まれたな。

お宝探しに時間をかけすぎたか。」


ルシエラールを連れた俺は窓越しに外を見る。見事に完全武装の衛兵が邸の回りに陣取っている。


「どうするつもりですの!」


二階から階段を降り、正面玄関に向かう。

騒ぐルシエラールを尻目に俺はエアライダーを出した。


「ルシエラール、俺の後ろに乗れ。」


「えっ、はい。」


ルシエラールは素直に俺の後ろに乗り、俺に体を任せてくる。


「、、、掴まっていろ。」


エアライダーに自分の魔力を連結し、瞬時にドアを蹴破って発進させた。


「ぐわ!」


思った通り、ぶっ飛んだ扉の下敷きになり何人かはのびている。それに、驚いた他の奴も一瞬動きを止めた。


「馬鹿だ。」


ハンドルから片腕を外し、一際大きい爆弾を後ろへとを投げ捨てる。当たらなくてもいい。計算は完璧だ。


ドガンッ!


爆発音と共にだんだんと地面が沈んでいる。

そして、地盤沈下は速度をあげ始めている。


「逃げろ!!!」


衛兵の誰かが言い始めたが遅い、元々大通りに辺りも爆破していたんだ。そこに邸の庭で爆発。邸のが全て沈むのに時間はかからないだろう。


俺はルシエラールを乗せた状態で走る。

出口のない壁に対し、入ったときと同じように絶対零度をぶつけ、出口を作る。


正面がかなり凹んで歪んでもいるが、走るのに問題はない。

帰りは、乗り合い馬車と鉢合わせしないルートでバレタニアへの帰路に入った。







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