第14話 2nd Encounter



「んああああああっ、さんじゅういちっっ!!!!」


【おっしいいいいいい

 1足りないがこんなところにも

 まままままま、次いくべ、減らなきゃアガリよ

 なおマッチングには30分かかる模様】


 深夜2時。

 現実空間に響かないのをいいことに、俺は感情のまま雄叫びを上げた。


 4時間経過し現在のポイントは10550、東京サーバー31位だ。

 スタート地点がレジェンドロビーの入室条件となる10000ちょうど、たかだか16時間2徹でそこまで行けたことを鑑みるとあまりにも渋い具合だ。

 試合時間と待ち時間が両方延びているというだけでは説明がつかない。

 それというのも――


「レジェンドだけ運賃高すぎだろこのゲーム……廃人の爆盛り対策するのは分かるけどさあ」


【-240だドン!!

 もう騎手脅してタダ乗りしようぜ

 レジェンドから運賃徴収させられる騎手さん可哀想でカワイイ

 カー、俺も55万払ってればなー、騎手ちゃんお触りし放題なのに】


 一試合あたり、フルに稼ぎきって360ポイント。

 それに対し、この短期間で10000を貯めきった猛者のみが――正確には7000ポイントからのプレイヤーも巻き込まれているが――送り込まれるレジェンドマッチという戦場は、入場するだけでも賭け金として240ポイントを徴収されるのだ。

 専用馬車の利用料という設定らしく、マッチングする都度、騎手に金貨を手渡しするイベントが挿入されるのだが、手に汗かいて稼いだ給料から支払っていると思うと無性に腹立たしい。

 相応の特典があるとはいえ、30分待たされた挙げ句の果て、なのだ。


「あれで騎手さん男だったらぶん殴ってたよな……」


【あ

 あ

 あ

 アンチフェミだ、***!!

 不味い】


「正直VRの中に限ればフェミもポリコレも陳腐化してるよ。

 だって誰でも自分の好きな顔になれるわけで、あとはもう、個人の好き嫌いがあるだけだろ」


【……

 急に真面目な話するのやめろ

 とりあえず無敵のタグ付けとかないか?】


「この配信は実在の人物・団体とは関係ありません」


 俺は軽く笑って、溜め込んだurlの1つをクリックした。

 が、見覚えのある動画だ。

 リスナーが送りつけてくるぐらい印象に残ったクリップともなると、やはり数も限られてくる。


「暇な方々は明日までにDMでトラオの配信から笑えるクリップよろしくなー。

 んー……」


 時間を稼ぎつつ、考える。

 さて何を話したものか。

 過剰な身バレを避けつつ、興味を引けるようなものがいい。

 今の話題はわりと食いつきが良かったし、そこと関連付けた上で、過激にならないように……ああ、そうだ。


 俺はを操作する。

 視界との同期を切断、前に回してちょっと引いて、こんなものかな。

 試合が始まると強制的に同期させられるおかげで、感覚的に操作できるぐらいにはUIにも慣れてきた。


「良い感じ? 

 全身見えてる?」


【ok

 神

 ちょっと頭でかくない?

 アングル良いね

 イケメン】


「だろ? 

 このアバター、親戚の作品なんだけどさ」


 頭が大きく見えるのは『メタ・コネクト』の機能を使って変換したアバターだからだ。

 そのまま使えればより良いのだけど、それができてしまうとゲームバランスが崩壊するから仕方ない。

 叔父さんはゲーム毎に調整したバージョンも用意してくれるとか言ってたけれど……あの人も忙しいだろうに。

 こんど顔を合わせたとき、ちゃんとお礼を言わないと。


「俺もつい……一昨日、一昨昨日?

 こないだの日曜日だから一昨昨日か。

 そのときに父さんから聞いたんだけどさ、俺でも知ってるレベルのYoutuberだったんだよ。

 名前出して良いらしいから言うんだけどさ、誰だと思う?」


 視界右端に固定したコメント欄がわっと流れる。

 半分トラオ、1割ミエクロー、あとはほとんど知らない名前。

 けれど、1人、2人、……3人目を見つけたところで、俺は手を打ち合わせて解答タイムを打ち切った。

 パチン、そうそう聞かない綺麗な拍手。


「正解はー……」


 ドゥルドゥルドゥル、口で鳴らしながらふと思い出す。

 ほんとうは、こんな感じになると思ってたのになあ。


「森のおじっ……、森野クマさんでした!!!!」


【うっっさ

 声量で誤魔化そうとするな

 マジ? 

 オッサンさすがだな、両方イケるだけある

 悲報、オッサン、マジで叔父さんだった

 大丈夫これ、燃えない?

 まあでっかい甥っ子がいても全然おかしくない歳だから……】


「ちなみに俺はこれを知るまで叔父さんのことをネオニートか何かだと思ってました」


【草

 似たようなもん

 本質を見抜いてる】


「ッははははっ」


 酷い言われようだ。

 笑い転げて、コメントを読んで、また笑う。


 一分ほどして発作が収まった頃、ひとつの指摘が目についた。

 ――良い身分だなおまえ


 俺は目を細めて、薄く微笑む。

 その通りだ。

 反駁はない。

 俺は、なにもかもに恵まれた。


「いやあ、感謝しかないよ。

 家族にも、トラオにも。

 みんながどう思ってるか、本当のところは分かんないけどさ、自分が恩だと思うものはちゃんと返せるようになりたいもんだ。

 おまえらも、こんな時間まで付き合ってくれてありがとな」


【えへへ

 えらい

 やさしい

 ぶっちゃけトラオは絶縁レベルのことやってるけどなwww

 あんま気負わんと貰うだけ貰っときな、まだ高校生だろ

 この時間はちょっとしんみりするねえ】


「……お、ロード始まった、今回は早かったな。

 おまえら見てろ、勝って終わって、気持ちよく寝るぞ!!」








◇◆◇







 ズォンッ、銃口が跳ねる。

 カィイン、特有の効果音が響く。

 ヘッドショット、90ダメージ。


 俺はすぐさま狙撃銃をしまって走り出す。

 速度を乗せて、角度を合わせ、距離を調整し……足元に投擲。

 ぐんっと風に乗って、飛ぶ。


「かんっぺき!!」


 半分倒壊した建物の屋上に降り立ち、自画自賛。

 慌てて立ち上がる敵に斬りかかって、きっちり110ダメージ最大打点を叩き込む。


 対戦相手は――倒れない。

 しめて200点、ちょうど倒せるだけのダメージは与えたが、それだけだ。

 問題はどれだけ回復されたか。

 体感的には30だけど、40を超えている可能性も充分ある。


 攻めるか、安定を取るか。

 構えたまま射程に捉え、じっと考える。

 相手は構えない。

 構えたらワンチャンスすらなくなると分かっている。

 強い人だ。

 片手の刺突に対応できないとも思えない。


 じりり、すり足で体を寄せる。

 相手も合わせて後ろに退く。

 互いにすり足。

 片足が浮いた瞬間、大きな動きが取れなくなるからだ。


 じりじり、じりり。


 不味いか?

 リアルなグラフィックに釣られて錯覚しがちだが、このゲームに落下ダメージは存在しない。

 屋上なのだ。

 相手はこのまま下がり続けるだけで離脱できる。


 んー……、でも、それなら撃てばいいのか。

 落下硬直のタイミングなら外さないだろう。


 考えをまとめて、ギリリリ、俺は意識して靴音を鳴らす。

 キャラクターの姿勢や重心に意味を持たせられるほどの作り込みは、このゲームの特徴だ。

 広大なフィールドを走り回りぶんぶん剣を振り回しているだけでも遊べるが、対戦を突き詰めるのなら細かい操作キャラコンを駆使した駆け引きがキモとなってくるだろう。

 いやあ、楽しい。


 顔を合わせる。

 相手が表情を変える。

 つまさきが攣っているときのような、強ばった顔。

 そういう3Dモデルだからなのか、そういう心境だからなのかは、まだ判別できない。


 まあ、そんなものだ。

 見える情報量が増えたとしても、そこから相手の行動を予測し、自分の行動を決定するのは俺自身。

 精度を上げたければ経験を積むしかない。

 気楽に行こう。

 これからも、幾万と負けて、その上で幾千と勝つのだから。


 対戦相手は、後ろのことを気にするそぶりも見せず下がり続ける。

 ……どうにも、臭い。

 過去の体験が警鐘を鳴らす。

 言語化できない、仕掛けの予兆。


 全身を見る。

 中腰、素手のまま、見てから回避できそうな距離を維持している。

 右手は前、左手は……腰の裏。


 俺は思いきって大きく踏み込む。

 相手は待っていたとばかりに飛び降りる。

 飛び降りて、左手をぐるりと回す。

 空中だからわかりにくいが、投擲のモーションだ。


「それは賢いわ!!」


 追撃は諦め、後ろに下がる。

 何を投げられるか分からない以上、距離を取る以外の対処はなかった。


 灰色の床にガラス瓶が落ちる。

 後退しても、なお後方。

 反対側の足場端。


「えっ」


 緑色の風が吹き荒れる。

 背中を押されて、体が浮く。

 後を追うように、狭い屋上から飛ばされる。


「おわああああああ!?」


 偶然? 

 狙われた? 

 正面下には誰もいない。


 ――じゃあ、後ろだ。


 体が固まる。

 着地。

 衝撃が脳天まで突き抜け、硬直時間が終わる――


 正面には、壁に体を擦りつけるようにして立つ、金色の粒子に包まれたキャラクターが、ひとり。


「あっ」


 声が出るのと時を同じくして、対戦相手の口が開く。

 眉がぐいっと持ち上がる。

 どこからどう見ても、想定外に驚愕する男性の顔だった。


「切り捨てゴメンッ!!」


 黄色の花弁が、灰の街に四散した。

 ログが流れる。

 『You killed |ズッキーニャ72世』、どこかで見たような名前だ。

 ここまで辿り着くのはそう難しいことでもないけれど、それでも上位10%とか1%とか、下手すると0.1%の上位プレイヤーなのだ。

 リリース直後ならなおさら、見知った名前というものができてくる。


「……まあ、暴投したのはお相手氏なんで」


 勝ったのは嬉しいけれど、素直に喜びきれもしない。

 呆気ない幕切れだ。

 ほんとうはたぶん、俺の前で爆発させることで建物を挟むような位置関係を作りたかったけれど、落下の慣性を考慮して強めに投げたら強すぎたといったところだろう。


「なんか締まらないけど、これで確定?」


【いまもう1人死んで残り2人なんで1×40+108+120-240=28で確定ですね

 ひやひやさせやがってよお

 うおおおおおおおお!!

 きちゃああああ!!

 ラストこれはなかなかに持ってる

 お相手氏上手だったのに悲しい

 まだだ、まだ白い歯を見せるな、他が上がってるかもしれないから!】


 Journey to the El Dradoのポイントシステムは、キルポイント、順位ポイント、ゴールドボーナスの3種類で構成される。

 それぞれの上限が120で、合計すると一試合あたり最大360ポイントを獲得できるような仕組みだ。

 どれか2つを最大値で確保してもトントンだと考えれば、突然課された-240の重さが伝わるだろう。


 なにはともあれ、これで今日の目標は達成だ。

 リスナーに謝辞を述べつつ、安全確保のため室内に隠れる。

 両脇を建物に固められた地形だが、戦闘音で場所を把握した何者かが上から襲ってこないとも限らない。


「と、言うことでね」


 お決まりのフレーズを口にして、そんなことをしている自分自身におかしみを覚え。

 追いついてきた達成感に微笑んだその時だった。


 ゾォォン……、ゾォォン……、銃声が立て続けに脳髄を揺るがす。

 スナイパーライフルの発射音だ。

 それ自体は、ここ数時間で耳慣れたもの。

 けれど、今その音が聞こえること自体が異常だった。


「えっ、えっ、えっ?」


 俺は廃屋に隠れている。

 慌てて壁を確認するが、やはり射線は通っていない。

 銃弾が付近に着弾したような音も聞こえなかった。


【なにこれ? 

 なんかヤな感じ

 えっ、もう? 

 これPCじゃなくてコンシューマーでしかも先行期間やぞ?】


 不穏な気配に、ざわつく声。

 それももっともだ。

 銃器が使用可能なオンラインゲームにおいて、不自然な銃声を聞いて一番に想起するものは、概ね共通しているのだから。


「まさかiVRでチートするアホはいないだろ……、いないよな……?」


 言ってる間に、また2発。

 リロード、2連射。

 リロード、2連射。

 着弾音は依然聞こえない。

 変なダメージが発生しているわけでもなければ、射撃間隔が極端に短いわけでもない。


「これホントにチートか? 

 なんかバグってるだけな気もするんだけど……、分かんねえな」


【新作だしねえ

 今までバグらしいバグ見なかったけど、あってもおかしくはない

 iVRシステムができてからその辺無茶苦茶厳しくなったし、Cが出てくるには早すぎるでしょ】


 また空撃ちが鳴り渡る。

 空いた時間は……、たぶんスナイパーライフルのリロード時間と変わらない。

 リロードと射撃を延々繰り返すバグだろうか。

 ……そんなバグあるか? 


「まだ撃ってるな……、ヘイリスナー、ちょっと巻き戻し……ってTwitchは追いかけ再生できないんだっけ? 

 ここのクリップ撮るのと、できたらログ確認して教えて欲しい。

 あ、あとこのバグ報告されてるかどうかもよろしく。

 チーターじゃなさそうなら外出るけど、チーターならグレで自決するんで」


【この間できるようになったよ!

 ログ確認してくる

 検索してくるわ】


 打てば響くとはこのことか、視聴者たちが動き出す。

 みんなが心を同じくしていた。

 チーターじゃないことを確認して安心したい、もしそうだったなら白日の下に引きずり出して法の裁きを受けさせなければならない。

 チート、チーター、Cとも呼ばれる存在は、オンラインゲームにおいて畜生にも劣る外道であり、ゴキブリ未満の害虫だ。


 ――人と電子計算機を物理的に接続する技術が確立されたことで、電子計算機損壊等業務妨害罪や私電磁的記録不正作出・同供用罪は、それまでより遙かに重い罪として扱われるようになった。

 10年以上前は小説の中で語られるばかりだったという、が現実のものとなったからだ。

 軽度の身障者に向けられた医療機器として開発されたからこそ、法整備はただちに進められた――


 しかし、なおもチーターは生き延びている。

 捕まりさえしなければ罪には問われないのだと言わんばかりに、ゴミ虫共は蝗のごとくいくつものゲームをサービス終了にまで追い込んできた。

 チート開発者と購入者、そいつらに運ばれる倫理観0の虫けらたち。

 まっとうなゲーマーであれば、もれなく深い忌避感を抱いているものだ。


 数秒と待たず、結果は出た。


【キルログにはKAGAchってなってた。本物? 

 偽物はいないはず

 たぶん本物

 S.S/KAGAch * @FanagamK・34分 今から潜りまーす、たいよろ

 本人が言ってたし、表示名変えられない仕組みだから本物っぽい

 じゃあバグかな

 良かった、ゴキブリはまだ湧いてなかったんや』


「ふぅ、ビビらせやがって」


 情報が出そろい意見が固まったところで、俺はうそぶき額を拭う。

 ちなみに、エルドラドに汗は実装されていない。


【これ、呼ばれてるんじゃない?】


 誰かが言った。

 一理ある発想に、むむむと唸る。


 多くのプレイヤーが広いマップに散らばって最後の一人になるまで戦うバトルロワイヤルというゲームジャンルにおいて、時間経過に伴う戦闘区域の制限は定番の要素である。

 最終的に安全地帯が消滅する作品が多く、高スキルレベル帯――『うまいプレイヤー』のみで構成される試合をこう表現する――では目がけ生き残りが殺到するのがお約束なのだ。

 制限時間を付けなければいつまで経っても試合が終わらないという事情あってのことだが、長すぎても短すぎてもいけないのが開発上の難しいところだろう。


 このゲームは戦闘区域エリアが縮小しきってまでの時間が比較的長めに設定されている。

 長距離の移動手段に乏しいことからそうしたのだろうが、行動を最適化して高速化する高スキルレベル帯ではゲームテンポを阻害する長さなのは事実だった。

 特に大きいのは、エルドラド特有の要素に起因するエリア収縮の法則が広く認知されているところだろう。


 ズオォォン! 


 火薬が爆ぜる。

 さっきまでより、かなり近い。


「いやうるさいなこれ、ちょっと音下げた方が良い?」


【平気

 問題ない

 バランスかなり良いから崩さない方が助かりそう】


「りょうかい……、あれ、今度は一回で止まった?」


【止まったね

 マジで呼び出されてるんじゃない? 

 もうタイマンだしとりあえずそっちに行ってみれば?】


 ここから隠れ続けた場合、ゲームは最長で10分近く続く。

 残り2人でそれをやるのはあまりにも不毛だ。

 ポイント効率的にもさっさと終わらせて次に行った方がよっぽど良い。

 あー……、そういう視点だとこの試合を今日のラストにする俺が乗る意味は薄いのか。

 でもそれ、俺が楽しいだけだしなあ。


「まあ行くは行くんだけど……、これ待たれてたら嫌じゃない? 

 俺ならホイホイ出てきたヤツにスナコンぶち込むよ?」


【90、50、60!相手は***

 ヘッショだとスタン入るのマジで壊れてる

 それは草

 オチとしては完璧

 さすがに現役プロがそんなことせんやろ】


「まっさかね」


 笑いながら、廃屋を出た。


 彼ら彼女らはルールに抵触しない限り何をしてでも勝利を追及する蠱毒の住民だ。

 しかし、その『ルール』がゲーム内のものに限定されていたのは昔のこと。

 何かにつけて炎上しがちな昨今、スポンサーによる金銭支援を受け戦う現代のプロゲーマーが汚いままでいられるはずもなく。

 スポーツマンシップに則ってなんでもやるのが昨今の風潮なのだとか。


 スコープを覗き、仰角最大、モーション任せでぶっ放す。

 2発撃って強制リロード、構え直してまた2発。


「馴れ合いっちゃあ馴れ合いだけど」


【しゃーなし

 ま、多少はね? 

 面白ければ何でも良いんだよお!!

 ラストタイマンだし、誰に迷惑かけるわけでもなし、合意取れてるならそれでいいでしょ】


 狙撃銃を背負い、片手剣を装備する。

 街路の真ん中で、逃げも隠れもせず、じっと待った。


「集中するんで黙ります」


【おけ

 これでスナ撃たれたらほんと笑う

 勝つぞおおおおお!!】


 思い返すは先日の対戦。

 あれは、楽しかった。


 ――30秒ほどして、駆ける足音が聞こえてきた。


 再戦。


 ――建物の裏から、人影が勢いよく飛び出してくる。


 いざ。


 ――彼女は俺を見つけると、にんまり笑って立ち止まる。


 尋常に。


 ――一礼すると、返ってくる。


 彼女は大げさな動きで左手を示した。

 そこには青く輝くガラス瓶。

 俺は了解の意を込め、構えを解いた。


 マジックボトルが放物線を描く。


 氷が生じて、砕け散る。


 ふたり、同時、駆けた。















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