第4話 村の言い伝えを知る

「あの男は村の豚箱に送りました」

「え!」


 買い物を済ませ、おれたちは家でアイスを食べている。しかし店内の人や通行人たちにジロジロ見られて恥ずかしかった。それを想定して家で待ってくれと、みんなに頼んだのに。


「寿崎さんが心配で、我々ついてきちゃいました!」


 これだもんなぁ……。


「あー、おいしい!」


 まあ全員アイスに満足しているし、もう良いか。

 昨日おれは異世界に飛ばされたが、おっちゃん改め博士の扇風機で戻ることができた。今日は異世界から数人、おれの家に遊びに来ている。みんなは相当おれが気に入ったらしい。多くの友だちができたのは嬉しいけれど。


「そういう能力あるんだ」

「はい。僕の張り手で異世界への移動が可能です。しかし、あまりにも痛いので見かねた博士が発明を始めました。そして数日前、異世界転移扇風機が完成したのです」

「はぁ……」

「奴は反省するまで出られません。村長命令です」

「でも、それ結構キツくね?」

「何を仰いますか!」


 おれの言葉に強く返してきたのは村長だ。


「村長……」

「博士です!」

「分かったよ博士」


 幼いころから発明が好きだった村長は、博士と呼ばれる方が好きらしい。


「寿崎さんを苦しめる奴は許せません!」


 そんな村長に実験台にされたのは、おれです。


「あの男には本当に反省するまで豚の世話を無給でさせます!」

「あー豚箱って、そういう意味か」


 てっきり留置場かと。

 豚小屋って言えば? と細かいツッコミは心の中で済ませた。


「寿崎さんは我々の恩人です。村のみんなを幸せにしていただき感謝の気持ちでいっぱいです!」

「おれは何の力もないけど……偶然じゃないの?」

「実は村に、こんな言い伝えがありました。村に初めて異世界の者が来た瞬間みんなが幸せになる、と!」

「じゃ、それが……おれ?」


 アイス片手に、みんなは笑顔で「はい」と声を揃えた。

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