暴れ牛と夜明けの唄 15『暴れ牛⑥ 討伐成功』
『おまえ、なんで、もう、使えるんだよ!!』
『そっちだって、何かしらの、付与、受けたでしょ? とにかく、気が散るから黙ってちゃぁんと押さえててよ?
エリュシオンのヤツ。随分と嬉しそうな顔してやがる。
『はっ』
アレクシスが鼻で笑った。
エリュシオンが掲げた手の先に、出された魔法陣が、ファクナスの頭上に、華麗に広げられる。
『いくよ!』
『おうよ! みんな引けー!!!!』
周りが下がると同時に、振り下ろされる腕。それと一緒に魔法陣がファクナスを捕らえた!!
「ブオォォォォ────!!」
縛り付けられた体をどうにか自由になろうと、黒い塊が暴れもがいている。
はいはい、大人しくしててね?
魔法陣の中に描かれた星形多面体の角が、白く光り出す。
今日のも、美しい
エリュシオンはにっこりと、口に弧を描いた。そして、確かな発音で唱えた。
「
バシィィィィ────!!!!
張り巡らせた、ビリビリとする線で、磔にされたファクナスの動きは完全に止まった。
『よし! 総攻撃だ! いいか? アレクシスには気をつけろよ?』
『なんで俺なんだよ!!』
アシェルが笑いながら叫んでいた。唄はもう、終わっている。
『お任せください!』
だが、効果は十分だ。誰よりも先に、セドオアが飛び出した。
ギ ギ ギ ギ ギ
鈍い音を立て、動きを止めているファクナスの足に斬りかかった。足が一本切られると、口から衝撃波を吐き出す。
「いけー!! いけー!!」
だが、臆する者なく、騎士達が一斉に飛びかかる。あるものは、空から。あるものは地上から。
セドオアが更にもう1本、足を切り落とす。
そして、また1本……
『アレクシス!!』
『おおよ!』
いけ!
アレクシスが、ファクナスの正面に向かって走った!!
『ほら、特大の”たかいたかい”だよ』
彼の足元に、魔法陣が出されると、それを踏みつけて、アレクシスが大きく跳躍した。手には大剣。高々と振り上げる。
「墜──ち──ろ──ッ!!!!」
剣の重さとそこに、自分の体重をのせて、凄まじい勢いで落ちていく。離れた場所でも分かるくらい、大きな声。ファクナスの頭めがけて落下すると同時に、剣は振り落とされた。
ドゴオオォォォォォォォォオオオンンンン!!!!
ズズズズズズズズズズ……
地響きのような音を立てて、ファクナスの首は落ちていく。
ドオォォォォ────ンンンンッ!!!!
…………
…………
「「うおおおおおおおおおお!!!!!!!」」
騎士たちから歓声が上がり、手を叩き合い、勝利を讃えていた。その中で、アレクシスが拳向けている。アシェルも同じように拳をあげた。
「助かった。お前のおかげだ」
サファの背中に、声をかけても返事はない。アシェルが肩に手を置くと、グラリ、と体が傾いた。
「おいっ!」
慌てて支える。彼女のは、大きく目を見開いて、しばらくアシェルの顔を見た後、静かに目を閉じた。
「おい! 大丈夫か?!」
「大丈夫です……」
顔色は悪くない。『
「辛いのか?」
「……いいえ。その……この時間はいつもだと……寝ているので……とても……眠くて」
サファは、ポケットから小瓶を取り出して、魔力回復の飴を一つ口に入れた。
「加減はしたつもりです。わたしの役目はこれからですから……もごもご」
呑気な様子に、アシェルはため息をついた。野営地のテントまで戻り、彼女を寝かせようとしていると、ぺしっ、と手を
「なんだよ」
寝そべった白虎が、尾をゆらゆらと振り、アシェルは苦笑いした。
「お前、気に入ったのか?」
そう言って、サファを静かに降ろしてやると、白虎がトグロを巻き、彼女を包んだ。その様子が、まるで、保護者のようで、アシェルは微笑んで眺めていた。
そんな時、紙飛行機がテントをすり抜け彼の前に落ちる。
「え?!」
手紙を読んだアシェルは、驚きのあまり声を上げ、白虎に睨まれていた。
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