第10話 モカ

 マモちゃんは私の生きる活力だった。

 引っ込み思案な私をパソコン画面のマモちゃんが変えてくれたの。

 そしてマモちゃんと私はかけがえのない奇跡だった。

 同い年で、同郷で、同じ小学校に通ってたの。

 クラスは違ったけど隣のクラスだったの。

 しかも私の席の位置は隣のマモちゃんのクラスではマモちゃんがそこに座っていたの。

 席替えの奇跡なの。

 だから、私はマモちゃんの事をずっと見ていようって思うようになったの。

 友達伝てにマモちゃんがどこの中学校になるとか、どこの高校に進学するのだとか、大学だって同じにしたの。

 凄いでしょう?お金持ちだったの。

 一緒に歳をとるマモちゃんが凄かったの。

 どんどん近い存在になっていくの。

 どんどん可愛いから美しいに変化して私の前に現れるの。

 だから、私は近づき過ぎた罰なのかもって考えた。

 珍しく夜のライブ中継を始めたと思って視聴したら、彼女は電撃引退をして私の目の前で藻掻いて沈んだ。

 私の神様が地に堕ちた。

 その衝撃と受け入れなさに吐いて泣いて、学校を休んだ。

 そして私はこれからも私を支えてくれる神様を失ったから、模倣した。

 自分で偶像を作り、過去と現実、そして虚妄を詰めた十分の映像を毎日ひとつ投稿して一人で見た。

 やっぱり本物ではないから虚妄が尽きた時にパタリと辞めてしまおうと考えていたのだが、私はこれを全体公開にしていたみたいだ。

 自分しか見ていないと思っていた視聴再生回数は三桁、四桁と日に日に増えて、ダイレクトメールで二代目マモちゃんとしてゲーム配信のコラボを提案された事が私のマモちゃん人生を決定づけた。

 マモちゃん本人も数回しかないけれど友達以外のネットの人間とゲーム配信をしていたから、私もそれに従って参加した。

 二代目のマモちゃんが珍しいのか、それを皮切りに色んな人から声を掛けられ、誘われ、仕舞にはテレビに出る事になった。

 マモちゃんのファンからも私のテレビ出演を喜んでくれたので、沢山出演した。

驚きの連続だった。

 テレビの裏も舞台の輝きもほとんど知った。

 二代目マモちゃんを辞めようとは思わなくなった。

 それはもう私の自我だけど、この輝かしさを手放したくもなかった。

 だから、少し嫌われた。

 だから、変に注目された。

 やりたくもない事を強要されて私は飛び込んだ。

 心臓が締めつけられる。苦しくてしょっぱい。

 目も痛いし、内臓全部ペチャンコ。私も同じ途を辿る。

 マモちゃんと一緒に苦しく死ぬの。藻掻けなかったけど。

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