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第9話 マモレ
私の名前は日野マモレ。
私はどこにでもいる普通の女の子。
でも世間というか、別の界隈からでは私は普通じゃないの。
誰もが羨む注目アイドルなの!
地上で歌ったり踊ったりするようなアイドルじゃない。
地下で下積みするアイドルでもない。
私はネットアイドルっていう肩書を持っているの。
ネットアイドルなんて言葉、アナタは知らない?
歌ったり、踊ったり、ゲームしたり私の顔を映しながらトークしたり、液晶画面の配信ページから色々マルチにエンターテインメントを送るのが私なの!
凄いでしょう?
初めはパパが撮影してくれた私の踊っている動画を親バカモード全開で全世界の人間が見る動画投稿サイトに投稿したのが始まりだったの。
私のママ譲りの可愛さが視聴者にウケたってパパは言ったの。
知らない普通じゃない名前の人達が私を褒めるそのコメントが不思議で面白くてまた撮ってってパパにおねだりしたの。
パパは私のおねだりを沢山叶えてくれたの。
だから私もパパにお礼がしたくて『広告収入』でパパにお礼をしたの。
今で言えば私とパパはウィンウィンな親子だったの。
「こーんにちは♪今日もマモのライブ見てくれてありがとう♡」
小学生からやってきたこのアカウントももう十年。
私かなりベテランなの。
カリスマスーパーモデルの次ぐらいに私は人気なの。
「マモちゃん!昨日の動画見たよっ可愛かった」
「マモちゃん、あのメイク道具どこで買ったの?」
「マモちゃん次なんの動画撮るの?」
大学生になったらモデルさんみたいな人が多いの。
高校生時代にダイヤの原石だってチヤホヤされた華憐な少女の精鋭達が良い素材を活かしてこの大学で耀きを見せるの。
そんな綺麗で可愛い友達の上に私は必ず存在する。
ホント吃驚だよね。私みたいな天然八割化粧二割で注目されてる私が皆に羨ましがられるなんて。
やっぱり、友達選びも私上手だからかな。
私、ナルシストじゃないの。
これは事実だから。
でも最近悩んでることがあるの。
ずーと、撮っている内容に飽きてきたの。
友達集めて卓上でパーティーゲームとか、顔出しゲーム配信、ライブばかりしているのに飽きたの。
ドンドン発売されるゲームには有難みを感じるけれど、根本のスタイルが私にはあって、だからその範囲内でずーとしているから飽きてると感じているのかも。
だからといって、私はこのコンテンツを辞めるわけにはいかない。
それはパパの為でもある。
「マモレ、今日も動画を撮るのかい?」
「うん!」
「大丈夫か?最近よく撮影しているけれど、身体は平気?」
「平気だよ!パパもお仕事お疲れ様っ!月末になったら半分収入あげるね!」
「もういいよ。それは全部マモレのお小遣いなんだから」
「ううん!パパが手伝ってくれたから今の私がいるんだよ」
「う~ん。でもな~。こんなにもらったら金銭感覚が狂いかねないからな」
「貯金だよ!ちょ・き・ん」
「ハハハ。ママに似て賢くなったなぁ」
「でしょう♡」
ネタ切れになった私に残った選択肢はいくつあるのか分らない。
それで、報道される水死体の女に記憶が蘇る。
水死体。
その言葉に私はいつも思いが強くなる。
私のママ。
ママの死因は窒息死だった。
パパから聞いたのは、ママは知らない人に逆恨みされて殺されちゃった。その人もママと一緒に死んだって聞いた。
…考えてみれば、知らない人の不幸にどうして注目が集まるのか。
注目。
不幸。死。
安直だけど、私は良い事を考えた。
「これならもう良いでしょう」
私ったら、なんて冴えているの。
「こーんばんは♪マモのライブを見てくれてありがとう♡」
———マモちゃん!
———こんばんわ
———珍しいライブ
「めずらしーでしょ?実はね、今日はね、死のうと思うの」
「じゃじゃーん☆ここの廃校プールで自殺してみた☆という企画でーす」
「ということでぇ、バイバイ皆ぁ♡」
本当に死ぬわけではないの。
ただの、電撃卒業がしたかっただけ。
あとで学校の友達には事情を説明して、普通の生活に戻ればイイだけの話なんだから。
うん、完璧!
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