午後8時の行き倒れ

帰り路が長い夜は

しんしんと身が冷えます

ひっきりなしに人の行き交う路の

半ばにたどり着くわけにもいかず

帰りたくもない家へ向かっている

歩く

歩く

歩く

歩く


歩かれず


足が愚鈍です

ここで倒れたとて

誰にも手を差し伸べてもらえなかったら

それこそもう、1人では立てぬ気がして

アスファルトの黒さを確かめました

声が上がる

私の声です

声を上げる私が嫌です

世界の中、他に誰かいませんか



帰り道が長い夜は1人ぼっちの海です

頭の中でBGMも在庫切れです

誰もかれもが書割なのだ

歩く

歩く

歩く

歩く

歩く

風景が歩く


私は立ち止まっている


景景景

色色色

ははは

ゆゆゆ

くくく

 


私は立ち尽くしている


どこに帰るのだろう あの群れは

何に還るのだろう あの光は

帰る場所があるのだろう

歩いて、歩いて


立ち止まった

ここが

私の帰る場所であれば良かったのに


背中にぶつかった舌打ちが私の身体を迂回して

早足に帰っていきます

排水口に吸い込まれる水は迷う必要がありませんね


路の途中には帰れない

海の中には還れない

歩く、歩く、歩かれず


帰る家がなければ帰る必要もないのに

話す友がなければ話す必要もないのに

すべて無意味ならば生きる必要もないのに


どこにも続かない路を前にして

もう

一歩も

動きたく

ない

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