太陽のない朝
日が昇らない朝が来たら、僕は驚いて
大切な誰かに話すだろう 顔も知らない誰かに伝えるだろう
太陽が昇って来ないんだ、すごいだろう。昨日まではちゃんとしていたのに
やがて みんなが気づいて 騒ぎ出すんだ
太陽が昇って来ないんだ、どうしよう。昨日まではちゃんとしていたのに
存外、太陽が僕らの元からなくなったって、自販機の明かりは煌々としていたよ
今まで日が昇っていたから、知らなかったね
日が昇る朝しか知らなかったね
明日はどうだろう 明後日はどうなるんだろう
一週間、二週間、一ヶ月、そして一年。季節が巡って
今日も 日は昇らなかったよ
いつも 日は昇らないんだよ
自販機の明かりはまだ煌々としている
黒い空も遠くの星も見えないくらいに
自販機には植物が売られていて 僕らはそれを食べるんだ
食べるしかないし、食べられるから
あの頃、誰かが言っていた
太陽が無いと 僕らの時計が狂ってしまうんだ
太陽が無いと 僕らの頭は狂ってしまうんだ
太陽が無いと 僕らは生きていけないんだ
みんな、そう思っていたんだね
そうして 誰かは死んでいったよ
いつか日はまた昇るんだって 最期に言いながら
僕は今でもここにいる
日が昇らないことがちゃんとしている
この世界を歩いてる
朝を待つ人はもういない
太陽に焦がれた人はもういない
いつかまた日の昇る朝を夢見て
頑張っていた人も 何もしなかった人も
とっくに死んだ
僕が生きているのは ただ日が昇らないことを許せたからだ
自販機の明かりで 生きていられたからだ
そうして、世界は終わらずじまい
世界の終わりなんてそうそう来ないらしい。
少なくとも、僕は次の世界に乗り換えたから。
次に乗り換えるのはいつだろうね まだきっと先のことだろうね。
乗り換えのときには気をつけて うかうかしていたら乗り遅れるよ
乗り換えるときには気をつけて うとうとしていたら乗り過ごすよ
乗り換えの放送には気をつけて 周りが正しいとは限らない
乗り間違いに気づくのは いつも 次の駅に着いてからなんだから
生き残った者だけが 正しさを知ることができるのだね
おはよう、今日も一日が始まるね
これからも、日が昇らない朝が来るよね
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