第422話 嘘つき
「りょうちゃん、おはよう」
朝、目を覚ますと1番最初に大好きな人から声をかけてもらえる。そんな幸せを味わえる僕は本当に幸せ者だと思う。
「まゆ、おはよう」
まゆがいつから起きていて、見守るような優しい表情で僕を抱きしめてくれていたのかはわからないけど、本当に幸せなことだと思う。
まゆとベッドから起き上がってからゆっくり朝風呂をしてそのあとホテルで朝食を食べた。朝から贅沢な気もしたけど、まゆが望んでいるならこれくらい安いものだ。
「りょうちゃん、ごめんね。何も言わずにこんなところに連れてきて…」
「いいよ。春香とゆいちゃんには内緒ね」
春香とゆいちゃんに知られたらまじで取り返しのつかないことになる。だから、内緒。この分の埋め合わせは何か別の形でしよう。
「りょうちゃん、帰ろっか。いつまでもりょうちゃんを独り占めしてると春香ちゃんとゆいちゃんに申し訳ないからさ」
「うん。帰ろう」
そう言ってまゆと2人でホテルを出てちょっとだけドライブを楽しみながらアパートに帰った。
「「ただいま」」
「「おかえりなさい」」
僕とまゆがリビングの扉を開けるとソファーに並んで座っていた春香とゆいちゃんが出迎えてくれた。いや、出迎えてくれた?………待ち構えていた。の間違いかもしれない。
「りょうちゃん、まゆちゃん、ちょっとそこ座ろうか」
春香が指さした先の床にはテープでバツが記されていた。ここに座れ。という意味なのだろう。僕とまゆは震えながら春香が指定した場所で正座する。床にダイレクトで正座はきつい。とか言ってる場合じゃなかった。
「りょうちゃん、まゆちゃん、昨日はどこにいたの?まゆちゃん、説明して」
「えっと、あらかじめ春香ちゃんとゆいちゃんにお伝えした通り、まゆの実家にいました」
「りょうちゃん、事実?」
「は、はい。事実です」
正直言った方がよかったかもしれない。でも、まゆが僕との約束を守って誤魔化そうとしてくれた為、僕だけまゆを裏切るわけにはいかない。
「嘘つき…」
黙って話を聞いていたゆいちゃんがそう言ったのを聞いて、僕とまゆは背筋がゾクッとするくらいの恐怖を感じる。
「りょうくん、なんで嘘つくの?知ってるんだからね。私も春香ちゃんも昨日、2人がどこにいたか……」
ゆいちゃんが涙目でそう言ってソファーから立ち上がる。ゆいちゃんの隣にいた春香も立ち上がってソファーの横にあった荷物を持ち上げた。
「りょうくん、まゆちゃん、ごめんなさい。嘘つきは許せないから…」
「私も、しばらくゆいちゃんのところに行くから2人は好き勝手して…昨日の夜、みたいに?」
ゆいちゃんと春香は僕とまゆの言い分を聞くことなくアパートから出て行く。僕もまゆも2人を追いかけたが、春香の来ないで。の一言でそれ以上追いかけられなくなる。
軽い気持ちで嘘をついたことを、僕とまゆは後悔しながらどうしようもない思いでアパートに帰った。
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