第305話 日帰り旅行デート
「ん…りょうくん……」
「私はりょうちゃんじゃないんだけど…」
車に乗ってから数十分、ゆいちゃんは眠りながら横に座っている春香を抱きしめ始めた。
「隣に座っているのがりょうちゃんだって完全に信じきってるね」
バックミラー越しに後部座席の様子を確認したまゆが笑いながら呟く。春香はやれやれ。と言いながらゆいちゃんの頭を撫でてあげて、ブランケットをゆいちゃんにかけてあげていた。優しい。
「ねえ、ゆいちゃん…ちょっと力強い…え、ちょっ、痛い…あの、もう少し加減して……」
「あはは…いつもだよ……」
ゆいちゃん、僕を抱きしめて寝る時、たまに力が強くなって起きちゃうこともしばしば…
「耳元でゆいちゃん大好き。って言ったら力弱めてくれるよ」
「なんか、りょうちゃんの側にずっといたい。って言う意思を感じるね……」
ゆいちゃんの扱い方を春香に教えると、まゆが運転しながら引きつった笑みを浮かべて呟く。
「ゆ、ゆいちゃん大好き」
春香が小声でゆいちゃんに言うが、効果がなかったようだ。
「ちょっと、座席倒すね」
「はーい」
まゆに許可をもらって座席を後ろに倒してゆいちゃんの顔に近づく。ゆいちゃんの頭を軽く撫でてあげながら耳元で「ゆいちゃん大好きだよ」と囁く。
「あ、弱くなった…」
「りょうちゃんに大好き。って言われてりょうちゃんの側にいられる。って安心したんじゃない?」
たしかに。そんな感じがする。そんなに心配しなくても、もうゆいちゃんを離したりなんてしないのに。一度幸せにする。と決めたのだから。僕から、ゆいちゃんを離すことはありえない。
「ゆいちゃん、これからもずっと、側にいてね。お願い」
返事はなかったが、ゆいちゃんの幸せそうな寝顔を見て、きちんと伝わったかな。と思う。
「りょうちゃん、まゆは?」
「わ、私は?」
「まゆと春香もずっと側にいてね。まゆも春香も大好きだよ」
「「えへへ」」
僕に大好きと言われてめっちゃ幸せそうな表情をしてくれる春香とまゆがかわいすぎて僕も幸せな気持ちになる。
そんな感じのやり取りをしながら、高速道路に乗り、まゆが運転を始めて2時間くらい経ち、まゆの休憩のためにサービスエリアに寄る。予定だとまだあと1時間と少しまゆに運転してもらわないといけないからゆっくり休んでもらいたい。
「じゃあ、朝ごはん食べよっか。早起きして頑張って作ったんだ」
まゆと一緒にお手洗いに行って、飲み物を買ってきてくれた春香が、お弁当箱に入ったサンドイッチを用意してくれる。めちゃくちゃ美味しそう。
「ほら、ゆいちゃん、朝ごはんだよ。起きて」
時間は9時半、そろそろ普通に起きて欲しい時間だけど、ゆいちゃんは幸せそうにぐっすり眠っている。ちなみに、今は出発した時のように春香がゆいちゃんに腕を抱きしめられているが、先程、春香がまゆとお手洗いに行くためにゆいちゃんから離れたら「りょうちゃん、私を1人にしないで…」と涙声で訴えて来て慌てて僕が後部座席に移動していた。手のかかる子だ。まあ、そこがかわいいんだけどね。
「ゆいちゃん、そろそろ起きようか。起きてくれないとどこか行っちゃうよ」
「それはいやだ!!」
さすがに、朝ごはんを食べる時は起きていて欲しかったので、僕はどうしても。と言う時にしか使わない手段でゆいちゃんを起こす。ゆいちゃんはすぐに飛び起きて「どこにも行かないで。私の側にいて」と寂しそうな表情で言う。この寂しそうな表情をあまり見たくないからこの手段ではあまり起こしたくないんだよなぁ。
「大丈夫だよ。ゆいちゃんの側にいるから安心して」
「隣にいてくれてないじゃん…」
「それはじゃんけんだから仕方ない。ごめんね。でも、側にはいるから安心して」
そう言ってゆいちゃんの頭まで手を伸ばしてゆいちゃんの頭を撫でてあげるとゆいちゃんは「これで許してあげる」と言ってくれた。
ゆいちゃんも起きたので車の中で4人で朝ごはんのサンドイッチを食べる。たまごサンドにハムサンド、ハムチーズサンドにツナサンド、僕の好きなサンドイッチを春香はいっぱい作ってくれていて嬉しかったし、めちゃくちゃ美味しかった。
朝ごはんのサンドイッチを食べて、少し休憩してからサービスエリアを出て目的地へと向かう。ゆいちゃんもちゃんと目を覚ましていたので、4人で楽しくお喋りをしながら目的地へと向かう。
目的地は京都。夏休み前に僕と春香とまゆで行きたいね。と言っていた場所の1つだ。ゆいちゃんも行きたい!と行ってくれたので、行くことになったのだが、予算や日程の都合上、今日1日だけの日帰り旅行デートに決まった。
4人で初めての日帰り旅行デート。いっぱい楽しんでいっぱい幸せな思い出を作りたい。
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