第303話 バイト後
「いらっしゃいませ……りょうくん!来てくれたの!?」
僕と春香とまゆがゆいちゃんがバイトしているお店に入るとゆいちゃんはすごく嬉しそうな表情をしてくれる。これだけで来た甲斐がある。
「なんか、バイトって言うよりもおばあちゃんのお店のお手伝いをする中学生くらいの孫って感じするよね」
私服+普通のエプロンという感じのバイト姿で働くゆいちゃんを見てまゆが呟く。たしかに。と一瞬思ってしまったが同意するとゆいちゃんに怒られそうなのでやめておこう。
ゆいちゃんのおすすめに従って注文を済ませると、しばらくして注文した料理が運ばれてくる。
「今、お客さんいないから私も一緒にまかない食べてきたら?って言われたから一緒に食べていい?」
「もちろん」
ゆいちゃんと一緒に夜ご飯を食べる。とは言え、ゆいちゃんはさっさとまかないを食べ終えて厨房に戻って行った。
「忙しそうだね」
さっさと厨房に戻って行ったゆいちゃんを見てまゆが呟く。今はお客さんは僕たちしかいないが、もうすぐ営業時間が終わるギリギリの時間なので当然だろう。僕たちが来る少し前まではかなりお客さんがいてめちゃくちゃ忙しかったみたいだ。
「りょうくん、店閉めてからバイト終わるまでちょっと時間かかるんだけど…私、今日、お泊まりしたいなぁ…」
「終わるまで待ってるよ」
最初からそのつもりでこの時間に来た。春香とまゆも同意済みなので、僕が終わるまで待ってるよ。とゆいちゃんに言うと春香とまゆも頷いた。
「あ、ありがとう。じゃあ、これ、私の部屋の鍵…よかったら私の部屋で待ってて…あ、でも、タンスとか開けたりしないでね…ま、まあ、りょうくんになら見られてもいいけど…」
「大丈夫。まゆたちの前でそんなことできる度胸、りょうちゃんにはないから」
ゆいちゃんがまた暴走してわけわからんことを言い始めるとまゆが真顔で言う。いや、まあ、たしかにそうなんだけどさ…もう少し言い方を和らげていただきたいなぁ…
というわけでお会計を済ませてお店を出てすぐ横にある階段を昇りゆいちゃんの部屋の鍵を開けてゆいちゃんの部屋に入る。
ゆいちゃんがいないのにゆいちゃんの部屋でゆいちゃんの帰りを待つことにちょっと違和感を感じたりもするが、春香とまゆといろいろ話したりしながらゆいちゃんを待つ。
「りょうくん、お待たせバイト終わったよ。春香せ…春香ちゃんとまゆちゃんもお待たせしました」
「「「お疲れ様」」」
「りょうくん、今日いっぱい頑張ったから、疲れた〜頭撫でてぇ」
「あー、はいはい。ゆいちゃんは甘えん坊さんだねぇ」
僕の膝に頭を乗せて床の上に横になるゆいちゃんの頭を撫でながら僕がゆいちゃんに言うと、ゆいちゃんは「甘えん坊さんじゃないもん」と頬を膨らませて反論してきた。かわいいなぁ。
「ほら、ゆいちゃん、お泊まりするなら早く準備して、じゃないと置いてくよ」
「あ、それはいや、すぐ準備します」
まゆがゆいちゃんに言うとゆいちゃんは慌てて起き上がってお泊まりの準備を始める。
「りょうくん、明日の着替えどっちがいい?」
ゆいちゃんが2着の服を見せて僕に尋ねる。ぶっちゃけ、どちらでもかわいいと思う。
「こっち…かな」
「なるほど。りょうくんはこっちの方が好みなのね。覚えとく」
かわいいかよ。そんな、僕の好みなんか気にしなくてもいいのに…
ゆいちゃんの準備が終わると、僕たちはゆいちゃんの部屋を出てまゆの車に乗ってアパートに帰る。アパートに帰ったら、もう日付が変わるくらいの時間になっていて、交代でお風呂に入る。
「あれ、ゆいちゃん寝ちゃったんだ」
一番最後に僕がお風呂に入り、軽くお風呂掃除をしてからお風呂を出ると、リビングに敷いてあるお布団の上でゆいちゃんはぐっすり眠ってしまっていた。
「うん。りょうくんがお風呂出るまで起きてる!って言ってだけど、疲れちゃってたんだろうね。すぐ寝落ちしちゃった。起こすのもかわいそうだし、このまま寝かせてあげよう」
ぐっすりと気持ちよさそうに眠るゆいちゃんの頭を撫でながら春香は小さな声で僕に言う。ゆいちゃんが寝てしまったので、ゆいちゃんを起こさないように僕たちも寝ることにした。春香とまゆに言われて僕はゆいちゃんの隣で横になり、じゃんけんに勝った春香がゆいちゃんとは反対側の僕の隣で横になる。
4人で川の字になって、その日はぐっすりと眠った。
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