第297話 4人のプロローグ







「「ただいま」」

「おかえりなさい」


僕とまゆがアパートに帰ると、出迎えてくれたゆいちゃんがいきなり抱きついてくる。


「びっくりした…いきなり抱きつかないでよ」

「えへへ。こうやってりょうくんを出迎えるのが夢だったの…」


何それ、かわいすぎるでしょ…ゆいちゃんがかわいすぎて僕がゆいちゃんにデレデレしていると僕とまゆを出迎えてくれた春香もゆいちゃんのように僕に抱きついてくる。かわいい。けど…痛いです。ちょ、春香さん?手加減して…痛い。痛いよう。


「まゆも…」


ゆいちゃんと春香に続いてまゆも僕に抱きついてくる。かわいいかよ。何これ、ここは天国ですか?と思いながら僕は3人を抱きしめる。幸せすぎて死にそう。


「ゆいちゃん」

「なぁに?」

「これ、プレゼント」

「え、急だね…」

「ゆいちゃんだけ何もないのは申し訳ないからさ。まゆの提案でバイトの前に買いに行ったんだ。開けてみて」

「ありがとう。すごく嬉しい。まゆ先輩もありがとうございます」

「ゆいちゃん、まゆのこと先輩付けで呼ぶの禁止ね。なんか嫌だ。同じ立場なのに先輩呼びされるの」

「えぇ…」


まゆにそう言われてゆいちゃんは困惑した表情をする。懐かしいなぁ。僕もまゆに先輩呼び禁止された時、今のゆいちゃんみたいな反応した気がする。先輩に先輩呼び禁止されるってなかなかにめんどくさいからね。


「あ、ついでに敬語禁止ね」


ついでの要求もなかなかにきつい。ゆいちゃんがかわいそうになるけど、ごめん。ゆいちゃん、助けを求められても助け船出せないや。頑張って慣れて……大丈夫。慣れればなんとかなるから。


「ほら、まゆって呼んでみてよ」

「え、ぇ……」

「まゆ、いきなりは厳しいと思うからさ、とりあえずまゆちゃんとかで許してあげて。ゆいちゃんもそれなら妥協できる?」


ゆいちゃんがかわいそうだったのでちょっとだけ助け船を出してあげるとゆいちゃんはすごい勢いで首を上下に動かした。


「じゃあ、まゆちゃんでいいや。ほら、呼んでみて」

「え、えっと…ま、まゆ…ちゃん……」


かわいい。いや、これ、やばい。かわいすぎる。僕だけじゃなくて春香とまゆもゆいちゃんのかわいさを感じて悶えていた。


「ゆいちゃん…私も…」

「え、えっと…は、春香…ちゃん…」


春香が完全にノックアウトした。かわいさの暴力だわ。この初々しさがたまらん。


「かわいすぎる。もう、ゆいちゃん、まゆの妹になって」

「私も、ゆいちゃんみたいな妹欲しい…」


春香とまゆがゆいちゃんにべたべたになってしまった。春香とまゆをゆいちゃんに取られてちょっと寂しい…


「あ、え、えっと、とりあえず、これ、開けたいんですけど…」


ゆいちゃんがそう言うと春香とまゆがそうだった。と言いながらゆいちゃんから離れる。リビングに戻り、ゆいちゃんは袋から箱を取り出して箱をゆっくり開ける。


「嬉しいなぁ…」


泣きながら、ゆいちゃんは本当に嬉しそうに言う。これまでの苦悩や、様々な感情が相まって流れでる涙はすごく、美しく感じる。


ゆいちゃんは涙を拭いながら指輪を手に取り僕や春香、まゆみたいに左手の薬指に付ける。


「ぴったり…」

「よかった。お揃いじゃなくてごめんね。だけど、満足してくれたかな?」

「うん。一生大切にする。私の1番の宝物」

「気に入ってもらえてよかったよ」

「私、こんなに幸せでいいのかなぁ…今までいっぱい、りょうくんとか春香せん…春香ちゃんとかまゆちゃんにいっぱい迷惑かけてさきとかこう君とかいろんな人に心配かけてたのに、こんなに幸せになっていいのかなぁ…」


大粒の涙を流しながら幸せそうな表情でゆいちゃんは僕に言う。僕はそっとゆいちゃんの背後に移動してゆいちゃんをそっと抱きしめる。


「これからずっと、幸せでいて。今まで…ゆいちゃんをいっぱい傷つけちゃったからさ。これからはずっと、幸せでいて欲しい。これからずっと、幸せでいさせるから。僕を好きになってくれたこと、僕をあきらめないでくれたこと、僕を選んでくれたこと、絶対に後悔させないから」

「ありがとう。私、今、すごーく幸せ。私を幸せにしてくれてありがとう」


大粒の涙と君の笑顔が、すごく眩しく感じた。君に幸せになって欲しい。そう、願っていたが、今では、君を必ず幸せにする。に変わっていた。


約束する。君を…必ず幸せにする。と……


4人で必ず幸せになる。







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