第296話 新しい日常の前に
「りょうちゃん、そろそろバイト行くよ」
「え、まだ早くない?」
「いいから。りょうちゃんにはやらないといけないことあるでしょ。早く行くよ」
4人でお昼ごはんを食べて4人で適当にグダグダしながら今後のことについて話しているとまゆが僕にそう言って、僕に抱きついて離れようとしないゆいちゃんを僕から引き離してちょっと強引に僕を連れ出そうとする。
「まゆちゃん、ゆいちゃんに妬いちゃったのかなぁ。ゆいちゃんは今日、バイトとかない?」
「あ、ないです」
「じゃあ、りょうちゃんたちがバイト行ってる間に一回ゆいちゃんのアパート戻ってお着替えとか取りに行こうか。そのあと一緒に今日の夜ご飯作ろうね」
「はい」
僕がまゆに連れ出される最中に春香とゆいちゃんはすごく楽しそうにお話ししている。いいなぁ…
僕はまゆに車まで連行されて助手席に乗せられてシートベルトをつけさせられる。ちょっと怖い。
「ま、まゆ、怒ってる?」
「え?怒ってないよ」
え?怒ってないの?でも、まゆが嘘ついてるようには見えないから本当に怒ってないのかな…じゃあ、なんで強引に連れ出したんだろう…
「今日、何かやらないといけないことあったっけ?」
「あるでしょう。緊急でやらないといけないことが」
え、何?バイト関係では特に思い浮かばない。
「にぶちんだなぁ…これだよ。これ」
まゆは左手の薬指についた指輪を僕に見せる。
「ゆいちゃんだけないのはかわいそうでしょう。だから、バイト始まる前に急いで選ぶよ。お揃いは無理だけど…1人だけないのはかわいそうだしね…」
「あーたしかに。まゆの言う通りだね。教えてくれてありがとう」
「えへへ。もっと褒めて〜」
かわいすぎかよ。運転終わったら頭なでなでしてあげよう。
「でも…選べるかなぁ…まゆ、困ったら助けてね」
「ダメだよ。りょうちゃんからゆいちゃんへの初めてのプレゼントなんだから…大丈夫。ゆいちゃんは絶対気に入ってくれるはずだよ。りょうちゃんからのプレゼントに意味があるんだからね」
「そっか…そうだよね…」
そんなやり取りをしているとすぐにバイト先の本屋さんがあるショッピングセンターに到着する。
「あ、でも…ゆいちゃんの指のサイズとかわからない…」
「………春香ちゃんに連絡するわ。とりあえず、どんなのにするかだけは選ぼう」
「そうだね」
そこそこのお値段のアクセサリーショップに入ってすぐにまゆは春香にゆいちゃんに悟られないようにゆいちゃんの指のサイズを調査するように指令を出した。すると、すぐに春香から返事が届いた。春香の指輪よりもちょっと小さいくらい。と返事が届いた。どうやって調べたのかはわからないけどさすが春香…帰ったら頭なでなでしてあげよう。
「どれにするかは決めた?」
「うん。直感だけどこれにする」
「うん。いいと思うよ」
僕はゆいちゃんへの初めてのプレゼントを購入した。ゆいちゃん喜んでくれるといいなぁ。と思いながら渡すのを待ち遠しく感じる。
「りょうちゃん、バイトまで時間あるから、今から少しデートしよ」
「うん。いいよ」
バイトまでの時間、まゆとの2人きりでのデートを堪能する。カフェでコーヒーを飲んでケーキを食べて雑貨屋さんでお買い物して、すごく幸せな時間を過ごした後、バイトに向かうと同じ時間にシフトに入っていた子に僕とまゆがデートしていたところを見られていたらしく、店長たちに散々揶揄われた。お恥ずかしい……
「疲れた……」
「僕も……」
散々揶揄われてバイトが終わる頃には僕もまゆも疲れきっていた。癒しが欲しい…
「りょうちゃん、抱きしめて…じゃないと帰れない」
「うん。僕もまゆを抱きしめたかった」
「何それ、まゆのこと好きすぎじゃん」
「うん。大好き」
そう言ってまゆをぎゅっと抱きしめるとまゆも僕をぎゅっと抱きしめる。すごく幸せで疲れは一瞬で吹っ飛んでしまう。
「春香ちゃんとゆいちゃん待ってるし早く帰らないとね」
「うん。でも、もう少しだけこうしてたい」
「まゆも……」
しばらく、お互いに抱きしめあって、急いでアパートに帰る。ゆいちゃんへのプレゼントを渡すのが楽しみで待ち遠しかった。
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