第223話 プレゼント返し




「ねえ、りょうちゃん、まゆと春香ちゃんの服、新しいの買ったし、りょうちゃんも新しい服買おうよ。それで、今度3人で今日買った服着てデートしよ」

「まゆちゃん、それいいね!りょうちゃんに買ってもらったお礼しないとだし最高のアイデア!」

「だよね!じゃあ、決定!りょうちゃんの服選びに行こう!」


春香もまゆも、自分の服を選ぶ時よりも楽しみそうに目をキラキラさせて僕を引っ張って男物の洋服店に入る。


「「これ絶対りょうちゃんに似合う!!」」


春香とまゆが別々の服を持ってきて僕に言う。


「「絶対こっちの方が似合ってる」」


春香とまゆが、お互いが持ってきた服を見てから自分が選んだ服を指さす。


「まゆちゃん、りょうちゃん…昔からそういう服着ないよ…ここはさ、りょうちゃんと付き合いの長い幼馴染みの私が、りょうちゃんのコーディネートをしてあげるべきだと思うんだけど……」

「そんなことないもん!りょうちゃんはまゆが選んだ服ならなんでも喜んで着てくれるはずだし、絶対似合うもん!春香ちゃんの方こそ、いつものりょうちゃんと変わらないような服選んじゃって…たまには変化も必要だとまゆは思うなぁ」


………言い争いが始まった。いやいや、自分たちの服選びじゃなくて僕の服選びで揉めないでよ。………それだけ、春香とまゆに大切に想ってもらえている。ということなのかなぁ……


「春香、まゆ、僕のこといろいろ考えてくれるのは嬉しいけどさ、お店に迷惑だから少し落ち着こうよ」

「あ、うん。そう、だね…」

「ごめん……」


僕の言葉を聞いて、春香とまゆは落ち着いてくれた。


「せっかく春香とまゆが選んでくれたからさ、どっちも試着してみていいかな?それを見てから決めない?」

「あ、うん。そうだね。賛成」

「まゆも、それでいいよ」


僕は春香とまゆが選んでくれた服を順番に試着して春香とまゆに見せる。


「まゆちゃんが選んだ服…新鮮な感じがしてありだね」

「春香ちゃんが選んだ服も、無難な感じでありだと思う」


両方とも着てみせたら春香とまゆがさらに悩み始めた。ここで春香とまゆ、両方が選んでくれたものを買うと、先程約束したデートの日に、どちらが選んだ服を着ていくかで揉める未来が目に見えている。


「春香ちゃんが選んだ方にしよう」

「え、まゆちゃんが選んだやつの方がいいよぅ」


と、今度は別のところで揉め始めた。お互いのことをきちんと尊重しあえているのはすごーくいいことだと思うが、揉めるのはよくないなぁ。


「「ねー、りょうちゃん。選べないから好きな方選んで」」


結局、僕に投げられた。うーん。僕的には、春香が選んでくれたやつの方が着やすくていいのだが、たしかに、まゆの言う通り新鮮味に欠ける。彼女が、できた今、おしゃれには気を配りたいし…そう考えるとまゆが選んでくれた服の方がいいのかもしれない。


「選べない……どっちも一生懸命選んでくれて、どっちもいっぱい考えてくれたのに、選べるわけないよ……」


優柔不断、と思われるかもしれないが…選べないでしょ。だって、春香もまゆも本当にいろいろ考えてくれたんだよ。いっぱい悩んでいっぱい考えてくれて出した結論がここにある服なのだ。選べるわけがない。優劣がつけられるわけない……


「じゃあ、私とまゆちゃん、両方からのプレゼント受け取ってくれる?デートの日はさ、おしゃれにまゆちゃんが選んだ服着てくれればいいから、私が選んだ服も受け取って欲しい。私が選んだ服着て、今度一緒に大学行こうね」

「春香ちゃん…いいの?」

「いいよ。まゆちゃんが選んだ服のりょうちゃんもかっこいいしさ。よし、じゃあ、これで決まりにしよ」


春香がその場を取りまとめてくれた。春香も最近、しっかりしてきたなぁ。と思う。以前の春香なら慌てふためいて何も言ってくれなかっただろうから…


「春香、ありがとう」

「いえいえ、じゃあ、りょうちゃん待ってて、まゆちゃんとお会計してくる」

「え、やっぱ申し訳ないし自分で出すよ」

「りょうちゃん、それはだーめ。まゆも春香ちゃんもりょうちゃんからもらった素敵なプレゼントのお返しがしたいの。お返しくらいちゃんと受け取らないとだめだぞ」

「まゆちゃんの言う通りだよ。りょうちゃん」


春香とまゆにそう言われるとそれ以上は何も言えなかった。ならば、お言葉に甘えて、プレゼントして貰おうかな…どちらも一生、大切にしないとなぁ……


「「りょうちゃん、お待たせ。プレゼント、帰ったらちゃんと渡すね」」


春香とまゆが声を揃えて僕に言う。さっき、僕が春香とまゆに買ってあげた服は今、僕が持っている。今日、帰ったら改めて交換会だなぁ。


「春香、まゆ、本当にありがとう」

「「いえいえ」」


一度、買った服たちを車に置きに向かった。そうしているとちょうどお昼時になっていたので、僕たちはショッピングセンターのレストラン街でお昼ご飯を食べることにした。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る