第222話 プレゼント
朝、僕は春香とまゆとゆっくり、喫茶店でモーニングをした。どうでもいいような話をしながら、ゆっくりコーヒーを飲み、モーニングのパンを美味しくいただく。
「で、春香とまゆはどこか行きたいところとかはあるの?」
「うーん。私は…りょうちゃんとまゆちゃんと一緒ならどこでもいいかなぁ……」
「春香、たまには春香もどこ行きたい。とか言いなさい」
「え…でも、本当にどこでも大丈夫だもん……」
いつもデート行く時は大体まゆが提案をしてくれている。春香がどこか行きたい。って言ったのはいつが最後だろうか…
「まゆは、行きたいところとかある?」
「うーん。まゆもたまには春香ちゃんにお任せがいいなぁ」
「えー」
まゆの言葉を聞いて、春香が不満そうな表情をする。春香が行きたい場所決まるまでゆっくりモーニングしよう。と言うことになり、僕とまゆはゆっくりコーヒーをいただく。春香が考えをまとめるのを待つ。
ちょっと悩んで、どうしよう。どうしよう。とちょっと慌てているところがかわいい。僕もまゆも春香をかわいいなぁ。と見つめてはいるが、助け船は出してあげない。本当に春香が困っていたら、助け船を出してあげよう。
「えっと、じゃ、じゃあさ…お、お買い物したい…かな…夏服…新しいの欲しいから…りょうちゃんに選んで欲しいなぁ」
「うん。いいよ。まゆはそれでいい?」
「うん。大丈夫だよ。まゆも夏服欲しかったし」
「じゃあ、お買い物行こっか」
「「うん」」
行き先が決まったので、お会計を済ませることにする。お会計は…伝票の争奪戦になることが多い。今日は僕が真っ先に伝票を掴むことができた。
「「りょうちゃん、わかってるよね?」」
先輩命令で伝票をこっちに寄越せ。と、春香とまゆが僕に手を伸ばす。今日は僕が出すの。たまには彼氏らしいことさせてください。と、いつも半強制的に割り勘にされる僕は切実に春香とまゆに願う。
「ダメ、今日は僕が出すの。僕のバイト代は春香とまゆに使ってあげるためにあるんだからね」
「私も…だから…」
「まゆも」
と、このように誰かが奢るとなると本当に揉めるので、割り勘が1番平和なのだ。結局、今日も割り勘になり3人とも不満そうな表情でまゆの車に乗る。
「結局、今日も来ちゃったね」
「だねぇ…」
バイトが休みの日にバイト先に来るのはちょっと複雑な気分になる。なんか、頑張って働いている方々の前でのんびりするのは申し訳ない気がする。
春香が本屋さんで買い物したいと言うので、僕と春香とまゆはショッピングセンター内にあるバイト先の本屋さんを訪れていた。
「あ、りょうちゃん、春香ちゃん、まゆちゃん、いらっしゃいませ」
お客様がいないレジで作業をしていたみはね先輩が僕たちに気づいたので、僕たちは軽く挨拶して本屋さんの中を歩き回る。
春香がお目当ての本を探している間、僕とまゆは本屋さんの中でちょっとぶらぶらしていた。
「「あっ…」」
レジでお客様が並んでいることを知らせるベルの音を聞いて、僕とまゆは反射的にレジに向かってしまうが、今日はバイトで来ているわけではないことを思い出して、僕とまゆはお互いに笑い合う。
「りょうちゃん、まゆちゃん、お待たせ。買いたかった本、買えたよ」
僕とまゆが笑っていると春香がやって来て、「なんであんなに笑ってたの?」と尋ねられた。理由を説明すると、「職業病かな?」と、春香に笑われた。そんなやり取りをしながら、僕たちは本屋さんを出てショッピングセンターの服屋さんが並んでいるエリアに向かう。春香とまゆは好きな服のブランドが違うので、片方ずつ見ていくことにする。
「これ、絶対まゆちゃんに似合うよ」
「これ、絶対春香ちゃんに似合うよ」
春香が好きなファッションブランドのお店で春香の買い物をしている最中、春香とまゆがそんなやり取りをしながらお互いが手に持っている服をお互いに重ねる。うん。どちらもすごくかわいい。
「ま、まゆ、春香ちゃんみたいな服は似合わないよぅ…」
「わ、私だって…まゆちゃんが着てるような感じの服は似合わないよぅ…」
ダメだ。僕の彼女たちが可愛すぎて、やり取りが平和すぎる。
「2人ともめっちゃ似合っててめっちゃかわいいよ」
「「本当!?」」
嬉しそうに目をキラキラさせるこの仕草…たまらない。
「よかったら、買ってあげるから…今度、それ着てどこか出かけようよ」
と言い、自分で買うからいいよ。と言う春香とまゆを強引に押し切り、僕は2人が持っていた服のお会計を済ませる。大好きな2人がまたかわいくなってくれることが素直に喜ばしい。
「「りょうちゃん、ありがとう」」
「いえいえ、大切に着てくれると嬉しいな」
「「うん。絶対大切にする」」
春香とまゆの笑顔を見て、こういう風にプレゼントを送るのも悪くないな。と思った。
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