第176話 王様ゲーム③




怖い…怖いよ……まゆ(王様)の目線がゆき先輩、春香、りっちゃんさん、ゆいちゃん、陽菜の胸を睨むように順番に眺めたのが怖い……前回のトラウマが……


「まゆちゃん、胸…揉むのは禁止にしようか。一応部活の活動時間内だからさ…節度を持って行動しないとだからね」


りっちゃんさんが胸を手で覆いまゆ(王様)から守るようにしながらまゆ(王様)に言うと、まゆはわかってるよ〜と言いながらゆき先輩と陽菜の胸を睨んだ。以前の王様ゲームの時に2人はいなかったからなぁ…2人とも中々立派なものをお持ちだし…特に…ゆき先輩はすごい……小柄なのに胸は全然小柄じゃない……あ、こら、まゆちゃん。ゆき先輩の胸見ながら舌打ちとかしちゃだめだよ。


「じゃあ、3番の人、まゆのほっぺにキスして…もし、嫌だったら拒否することは認めます」


まゆは僕を見つめながら笑顔で言う。まゆの命令を聞いた後、みんなでクジを確認すると3番は僕だった…え、なんでわかるの?エスパーなの?え、クジに細工とかされてるの?僕、誰にも見られないようにクジを開いたはずなんだけどなぁ……


「3番はりょうちゃんだね。まゆにキスしてくれる?」

「え…あ…」

「いやぁ?」

「嫌じゃないよ。喜んでするよ」


僕がそう言いながらまゆに近づくと春香はまゆちゃんだけずるい…と呟いていた。ごめんね。ゲームだからさ……ゆいちゃんはうぅ…となんか悔しそうにしているし、ゆき先輩とさきちゃんはゆいちゃんの肩に手を置いてゆいちゃんを慰めるような仕草をしている。りっちゃんさんは…速攻スマホのカメラを構えやがった。プライバシーの侵害!りっちゃんさんにスマホを向けられて戸惑っているとまゆが早くぅ…と物欲しそうなかわいい顔で言うので僕はまゆを抱きしめて軽く、キスをする。

数秒、キスをして離れるとまゆが、ほっぺたでよかったのに…と呟いてからありがとう。と満面の笑みで言ってくれた。隣にいる春香からは嫉妬の目線が、斜め前にいるゆいちゃんからは殺気が放たれていて少し…いや、かなり怖い。


さて、最初の王様の命令が無事?完遂されたのでクジの引き直しだ。みんなでクジを一斉に引き、中身を各自が確認、今回の王様はゆき先輩になった。


「うーん。どうしようかな…じゃあ、2番の人は5番の人に今までしていた隠し事を一つ暴露してもらおうかな…」


うわぁ。王様ゲームっぽいお題出たよ…2番は……僕です。はい。5番は誰だろう…と思っていると…まゆだった。まゆに隠し事か…まゆには僕の考え全て筒抜けみたいなところあるからあまりない気がするんだよな……


「えっと…まゆが、先に寝たりした時……その、まゆが可愛すぎて寝顔をスマホのカメラで何回か撮ったことがあります。ごめんなさい」

「え、そうなの?なんか恥ずかしいなぁ……まあ、でも、それくらいりょうちゃんがまゆのこと愛してくれているってこと…だもんね……♡全然許すよ」


割とまじでめちゃくちゃ怒られる覚悟をしていた僕だが、まゆは笑って許してくれた。優しい…抱きしめたい……


「え、ねえ、待って…りょうちゃん、もしかしてそれ、私にもしてる?」


春香が恥ずかしそうにしながら僕に尋ねるので、僕はうん。ごめんね。と答えると結構怒られた。ごめんなさい。春香には結構怒られたが、撮った写真のデータだけは守り抜いた。こんなにいい写真を消せるわけないじゃないか…


さて、仕切り直して3回目、王様はゆいちゃんだ。なんかいやな予感がするのは僕だけだろうか……

ゆいちゃんは僕の方をじっと見つめた後、命令を口にした。


「4番の人、私にキスすること。拒否権はないから」


王様の命令は絶対。絶対王政である。と宣言するかのような堂々たる命令の出し方だったが…生憎僕は2番だ。ゆいちゃんが僕の方をめちゃくちゃ見ていたので2番の札を見せると一気にしゅん。とした表情になる。なんか申し訳ない……


「あ、ゆき4番だ…えっと…どうしようね」


ゆき先輩が気まずそうな感じでゆいちゃんに言うとゆいちゃんは申し訳なさそうな表情をする。拒否権はない。って断言したのはゆいちゃんだしなぁ……


「じゃあ…はい、ゆいちゃん、これ、飲んで…残り少ないから全部飲んじゃっていいよ」


ゆき先輩はそう言いながらゆいちゃんに残りがほとんど入っていないお茶のペットボトルをゆいちゃんに渡した。ゆいちゃんだけでなく、見ていた僕たちも頭に?を浮かべた。


「ゆいちゃんの命令はただキスをするだけ…どんな方法かは指定してない。そのペットボトル、ゆきの飲みかけだから、ゆいちゃんがそのペットボトルに口をつければ間接キスの成立。間接キスでもキスはキスだから問題ないよね?」


なるほど。と僕たち全員納得してしまった。ゆいちゃんに至ってはごめんなさい。ありがとうございます。と言い、感激しながらゆき先輩、一生ついて行きます。と断言している。

後輩の無理難題に後輩が嫌な思いを一切しないように応えられるゆき先輩はめちゃくちゃかっこいいな。と思った。ゆき先輩みたいな先輩像に僕は少し憧れを抱いた。





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