第14話 仮入部




「うわぁ…すごいな…」

「去年もこんな感じだったよ…」


春香は引きつった笑みで答える。人混みが苦手な春香はここから先に進みたくないんだろうな…


入学式の翌日、新入生は履修登録のオリエンテーションや健康診断などがある。そんな新入生を待ち受けていたのは自分たちの部活に新入生を勧誘しようと新歓活動を行っている人たちだった。


次から次へと部活の広告ビラを渡される。駅前とかでよくティッシュ配りが行われているがあれと似たような要領で次から次へと広告ビラを渡していたがそれらを上手く躱して僕はオリエンテーションがある教室に到着する。教室まで僕を送ってくれた春香は僕と別れて吹奏楽部の練習場所であるホールに向かった。僕は教室に入ると人一倍目立った。今日、オリエンテーションなどが終わったら吹奏楽部の見学に行くためチューバを持ってきたのだがチューバを持って歩いたり教室に入ったりするとめちゃくちゃ目立つ。



そしてオリエンテーションや健康診断が終わり僕は春香に連絡を入れた。しばらくすると春香が迎えに来てくれた。

そのまま春香と一緒に吹奏楽部の練習場所であるホールに向かった。


「あれ、はるちゃん新入生連れてきてくれたの?って…チューバ持参?すごい子連れてきたね…」


ホールに入ると新入生の受付のような場所にほんわかとした雰囲気の女性が座っていた。


「私の幼馴染みなんです。りょうちゃんって呼んであげてください。チューバで入部希望でお願いします」

「そっかぁ、チューバに後輩入ってよかったね。しかも幼馴染みならはるちゃんも人見知りしないですみそうだもんね。あ、自己紹介遅れたね。私は安城亜美、みんなからはあーちゃんって呼ばれてます。ユーフォニアムパートの3年生で団長を務めさせてもらってます。バリチューの仲間としてよろしくね」

「こちらこそよろしくお願いします」


なんか僕の意思とか聞かずに僕がチューバパートに入ることが確定してしまったな…


「チューバパートには、はるちゃんともう一人3年生の子がいるんだけど今はビラ配りでいないからとりあえずはるちゃんにいろいろ教えてもらってね。あ、一応この紙に名前と学部、学籍番号の記入お願いします」

「分かりました」


僕は紙を受け取って名前、学部、学籍番号を記入する。そして記入した紙をあーちゃん先輩に渡して春香に案内されてホールの奥に向かう。



ホールの客席から入り、ステージに上がりステージの下手に僕と春香は向かった。


「チューバパートはホールの下手でパート練習とかやるから覚えておいてね。あ、あと今日、新入生込みで今年の課題曲のお試し合奏やるからりょうちゃんも参加してね。これ、楽譜」


春香はそう言いながら僕に課題曲の楽譜を渡す。春香から楽譜を受け取ると今年の課題曲はマーチをやるみたいだった。


「で、仮入部扱いだし今から練習するんだけど、どうする?基礎とか一緒にやる?」

「うん。久しぶりに一緒に吹きたい」

「了解。じゃあ、一緒にやろうか」


春香はそう言い楽器を持ってくる。その後しばらく2人で基礎練習をした後に課題曲の譜読みを行う。


「春香、音量少し増したね。相変わらず音綺麗だしすごいよ…」

「音量増したのは先輩の影響かな…先輩めっちゃ吹くから」


入学式での僕の予想は正しかったようだ。あんなにチューバを鳴らせる人がどんな人なのか僕は興味が出てきた。

そんなことを考えているとホールにはだいぶ人が集まって来ていた。



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