第68話 DANGER⇐


──ビー! ──ビー! ──ビー! 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 WARNING ─ WARNING ─ WARNING

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 俺を取り囲むように現れたその表示。


「えっ!?」


 周りの皆は、この状況が全く飲み込めないといった様子で、ただただ呆然と立ち尽くして、俺のことをじっと見つめている。


 それはそうだ。こんな表示、めったに目にするものではない。


 だが、俺は違う。


(これ、どこかで──)


 この表示は知っている。確実にこのゲームに入ってから見た覚えがある。


(でも、どこだ……? 

 俺はいったいどこでこれを────あ!)


 そう。それは、俺が知らず知らずのうちにこのゲームの裏側に触れてしまった


 つまり、秘密シークレットスキルを手に入れた


 ロイドさんが昔、岩と岩の間に刺したというファルさんという人の剣。それを赤の他人である俺が引き抜いた瞬間に出た表示。それと全く同じものであった。


 そして、俺以外にもうひとり、その表示を目にした途端、何かを思い出したようにハッと口元に手を当てた者がいた。


 それは、俺と同じ特性を持つ者。


 堂々と目の前に佇む彼と、バチッと視線が重なった。


「おい! ハクっ! 

 お前、まさかここで──」


 その人は、言いかけた言葉を慌てて飲み込む。


 そして、そこにいる全員の顔をひとりひとりゆっくりと見渡した。


「……グレイ、ヤミィ、ルーフ。団長命令だ。

 バトル中にも関わらず本当に申し訳ないが、少しだけハクと二人きりで話をさせてくれ。処置は後で考える」


 カリアス団長はその場で深く頭を下げた。


 状況がさらに飲み込めない様子の三人。


 しかし、団長に頭を下げられては命令に従わないわけにはいかない。そんな様子で仕方なくその場を後にしていった。



 しばらくの間、俺と団長は互いに沈黙。


 ビービーという耳障りな警報音は知らぬ間に止まっていたものの、俺を取り囲むその赤い表示だけは依然として光り続け、なぜか消える様子が全くない。


「おい……ハク。 お前、一歩下がってみろ」


──ザッ


 言われるがままに後ろに下がる。


 すると、


「えっ」


 パッと一瞬にして赤い表示が消えた。


「はあ、そうか。……お前、やっぱりここで手に入れたのか」


 「もう全て分かった」と言わんばかりに、団長はその場で項垂れて深いため息をつく。


 俺も団長が何のことを言おうとしているのか、既に察していた。


「えっと……そうです。

 俺は一年前に、ここで秘密シークレットスキルを手に入れました」


 まっすぐな視線を向けて、俺はその時のことを丁寧に説明した。


──


「そ……そうだったのか! ファルとロイドも絡んでいたとは驚いた。実は、以前の対戦の時に剣のことは疑っていた。が……ロキのやつ、俺に黙っていやがったな」


 団長は、呆れたように乾いた笑みを口元に浮かべる。


「そっ、それで……この表示について、団長は何かご存知なんですか?」


 俺は直球で尋ねた。


「ああ。知っている。というか、秘密シークレットスキル取得者ならば絶対に知らなければならない」


 俺の目を見つめたまま、団長はそう断言する。


「お前は……俺たちが、ただでこんな特別な能力を手に入れたとでも思っているのか?」


 真剣な声色が場の緊張感をさらに高めた。


秘密シークレットスキルというのはな、代償無しに手に入れられるほど甘いものではな──」


 突然、不自然な所で言葉が途切れる。




──スッ


 それはあまりに静かであった。


「──っ! ハクっ!!!」


 団長の顔色は一変し、急に焦燥を帯びた声で俺は名前を叫ばれた。動揺に揺れたその視線は、俺の後ろを捉えている。


 咄嗟のことに振り返ろうとすると、背筋を何かが這うように冷たいものが走り去った。



「NO.13、人格切替パーソナリティスイッチ

 ここに……いたんですね」


(え──)


 聞き覚えのない女性の声が、俺の耳に届いた。








        ……To be continued……

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次回:第69話 AWAY⇐

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