第63話 COUNTER⇐
突如、隕石でも落ちてきたように俺の前に現れた救世主。
ロキさんが露骨に嫌な顔をした。
「……ナツ。思ったより早かったですね」
「ふはっ。それも、お前の芝居か?」
気を失っているジークを肩に担いで、その頭から取れかかっていた黒いキャップを優しく直しながら、ナツさんは笑って返す。
「ふふっ、……いえ、今回は本当ですよ?」
「さあ? どうだか」
敵同士でありながら、なんだかんだ息の合った会話を交わす二人。
良きライバルとはこういう関係の事を指すのだろうか。
俺はバトルの最中にも関わらず、しばらく黙ってその様子をじっと見つめていた。
(あっ、
ナツさんの首元に目を遣ると、階級“大将”の表示が出ている。俺はそこで漸くさっきまで戦っていたロキさんが新兵の
(……? 俺も大将、ナツさんも大将?
あれ、俺達は何の為に反撃をするんだ?)
疑問に思ったが、今更それを言い出せる空気ではない。ロキさんを見つめるナツさんの瞳は既にやる気に満ち満ちている。
(ふふっ。まあ、いっか。楽しそうだから)
すると、
──ズドオオンッ
シオンさんがまた、俺たちの方へ豪快に矢を放つ。
誰も何も言わなかったが、皆がそれを対戦再開の合図だと悟った。
今度こそ正真正銘3対3のチーム戦。
それぞれが無意識に臨戦態勢に入り、適当な配置につく。
――――――――――――――――
ルーフ
ハク ナツ
--------------------VS---------------------
ロキ
(ジーク)
シオン
――――――――――――――――
陣形とまではいかないが、お互いが顔を見合わせ連携を図る。撃手は二人とも大きな岩にその身を隠していた。
(俺達は前衛2枚で後衛1枚だけど、相手は意外と役割のバランスが取れてるんだな。
……んー。なんとなくだけど、ロキさんが前衛だとは思わなかった)
シオンさんの弓術、ナツさんの体術といったような代表的な戦術が無く、その時々で柔軟に戦い方を変えてくるロキさん。
(中衛が妥当だと思うが……何かの罠か?)
俺はいっそう警戒心を強める。
「ちっ、本気で勝ちに来やがったな」
ナツさんが顔を顰めてそう呟いた。
「……気をつけろよ、ハク。
(え……)
──
俺の前に佇むロキさんのオーラは、とても静かだった。
「りん」
そう唱えるとロキさんは突然真上に飛び上がる。その瞬間、俺の方へシオンさんの矢が鋭く向かってくるのが見えた。
「せつ」
俺は移動系スキルで慌ててそれを躱す。しかし、飛び上がっていたロキさんが短刀を構え、俺の方へ勢いよく落下してきた。
──ギィン
鈍い金属音が響き渡る。俺は剣でその攻撃を防いだ……はずだった。
──グサッ
「うっ!」
腹部に鋭い痛みを感じ、咄嗟に後ろへ下がる。見るとロキさんは、反対の手にも短刀を隠し持っていた。
(くっ……暗器? やっかいな)
俺はその珍しい戦い方に少し動揺を見せる。
「ハクっ! 躱せ! それだけでいい。
……やっただろっ!」
すると、シオンを仕留めに行ったナツさんが俺に大きな声を上げた。
(ん? ……やっただろ?)
ナツさんの言葉に違和感を覚え、ロキさんの攻撃を躱しながら俺は必死に考えた。
(──あっ、そうか!)
俺はすっかり忘れていた。躱すのはもう、何千回と練習した。どうしても相手の動きを読むのに目ばかりを頼ってしまう俺の悪い癖を無くすために。
あの暗闇に包まれていたあの十日間。命懸けで身につけた危機回避能力。
そのナツさんの言葉が無ければ、俺はあの過酷な日々で得たものを全て、危うくドブに捨てるところだった。
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ステータスⅡ
ロキ 【Lv 869】
職業:騎士
称号:オールラウンダー
階級:大将 (仮:新兵)
スキル:移動系 ★★★★☆
飛行系 ★★★★☆
感覚系 ★★★★☆
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ステータスⅡ
シオン 【Lv 640】
職業:騎士
称号:神業アーチャー
階級:少将
スキル:移動系 ★★☆☆☆
飛行系 ★★★★★
感覚系 ★☆☆☆☆
※☆☆☆☆☆☆ = ★☆☆☆☆
……To be continued……
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次回:第64話 ESCAPE⇐
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