第40話 PAST⇐
どうして俺は、
いつ、どこで──……手に入れたんだ。
─────◀◁─Reloading─◀◁─────
今からだいたい一年程前。
俺がやってきたのは、ランという名の付けられた自然豊かな大きめの街。
その頃のランは、まだ
街の入口に立てられた白い門をくぐり抜け、俺はやっと辿り着いたその街に、胸を躍らせながら足を踏み入れる。
(お……何となく俺の故郷に似ているな。
彩り鮮やかだし、どこか感じのいい街だ)
目的地を探す為、街全体をぐるりと見渡す。
すると、最初に目に入ったのは、澄み切った流水に太陽光が弾かれて輝きを放つ、穏やかな河川であった。
「さてと」
俺はそう息をついて、依頼人から受け取った手書きの地図を両手に広げる。
(ん。……とりあえず川沿いを進むか)
俺は少し先に見えたその川岸に辿り着くと、川の流れに逆らうように黙々と川沿いを歩いていく。
しばらく行って、立ち止まった。
(えーっと次は……ん?
あ……ここがもうラギド山なのか)
自分の足がだいぶ角度のある険しい坂道に差し掛かって、俺はやっと自分が既に山の斜面の一部を登り始めていた事に気づいた。
進行方向に顔を上げる。
視線の先に捉えられたのは、この自然豊かな街には似合わない、全体的に茶色いごつごつとした岩山であった。
(こんな岩山の頂上に……本当に薬草が?)
薬草。それは俺がランにやって来た理由。
そう、俺はこの街に来る前、ラギド山の頂上に存在するという珍しい薬草を取りに行くよう、ある人物から依頼を受けていたのであった。
『ラギド山』
麓から少しだけ進んだところに立てられた薄汚れた木の看板。
(川沿いなのに緑が少ない。
でも……やはりここがラギド山か)
その地点から見上げる限り、沢山の茶色い岩しか見当たらず、頂上にその依頼された薬草があるようには到底思われなかった。
しかし、山頂へと細くなっていく川沿いをどんどん登っていくにつれて、脇に置かれた一つ一つの岩に処々こびりついた緑色の苔の量が少しずつ増えていき、俺は徐々に安心してその山の頂上を目指すようになっていた。
その珍しい薬草は、病に冒されたある一人の少女を救う為のものらしい。
(──というゲーム上のストーリー設定)
俺の目的はただ一つであった。
それはこの依頼をこなして、ステータスⅠの
「さて、今回の依頼で上げられるかな?」
ポンポンッ
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ユーザー名:ハク
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ゲームに入ってから一年、たくさんの人々の様々な依頼や相談を地道にこなしてきて、ようやくステータスⅠが熟練者らしくなってきた。
俺は別に完璧主義者というわけでは無いが、ここまで他の項目がSで揃えられると、どうせなら全部揃えたくなる。
その依頼は、本当にそんぐらいの軽い気持ちで引き受けたのだ。
だってまさか、その依頼で訪れたラギド山の頂上でこのゲームの裏スキルに触れる事になるなんて、俺は夢にも思わなかったから。
……To be continued……
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次回:第41話 MEMORY⇐
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