第24話 NIGHT⇐
「……どうしましたか?」
ロキさんは、急に話があると言った俺に戸惑いながらも
そして俺はある確認をする為に、軍服の上に羽織っていた黒いマントを脱いでみせる。
「……?」
ロキさんは首を傾げながらも、黙って俺についてくる。
暗く
そして、道の脇にある橙色の街灯にぼんやりと照らされた、アスファルトにちょうど俺の足の爪先が差し掛かった時だった。
「……っ!」
俺が口を開く前にロキさんが目を見開いた。
「ハク。それをどこで──」
ロキさんは瞳の奥を激しく揺らして、急停止をすると俺の前に立ち塞がった。
「ファル・ジェラルド」
俺はその名前を口にする。
「……どうして」
ロキさんは、再度俺に尋ねた。
しかしその声は、消えそうに掠れている。
「やはり……先程のファルさんという方はこの剣の持ち主の方でしたか」
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「ハクが『ファル』さんのようになっても良いんですか?
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さっきのレンヤさんのセリフ。
俺は、それが自分の腰に刺された剣に彫られている名前と同じである事に気づいた。
名前が同じなんてよくある事だ。そんな事で俺は、それが同一人物だと疑ったりはしない。
しかし、レンヤさんにそう咎められたロキさんの放った瞳の色は、俺の記憶の中である人物のそれとぴったり重なった。
それは、ハリアットで出会ったロイドさん。亡くなった親友の剣について話していた時の瞳の色はそれと同じ色をしていた。
「あっ! ハリアットでハクと一緒にいた彼は……ロイド・スミスですか」
珍しく落ち着きを失っていたロキさんの声色は、漸く元の艶を取り戻す。
「えっ、ロイドさんもご存知なんですか?」
ロキさんの口からは、俺の心を覗いたかのようなタイミングでその名前が飛び出した。
「ファルとロイドは一番の親友であり、一番の戦友でしたね。二人共忘れるはずがありませんよ。あの頃の
俺から視線を外し、寂しく遠くを見つめながらロキさんはさらに言葉を続ける。
「正直言うと、ロイドの方はあまり接点がありませんでしたけどね。
けれどファルは……かつての私の部隊の隊員であり、私がこの先ずっと謝り続けても、一生許されないだろう人物です」
(部隊員。え、一生……?)
俺は黙ってロキさんを見つめて、続きを促そうとした。
「ふふっ……やめましょうか、こんな暗い話をするのは。なんせ今日はハクの入団日ですから」
しかし、ロキさんはまたいつもの笑顔を見せて冗談ぽく気丈に振舞うと、さらに目を細めて俺を見つめ返す。
(……)
「戻りましょうか」
俺はモヤモヤとすっきりしない気持ちとは正反対に、ロキさんに全く逆らう事なく足を再度動かし始める。
(なぜかこの人には逆らえない)
「遅くなりましたね。団長もお待ちです」
再びゆったりと二人の足音が闇に響く。
その帰り道、斜め後ろから見たロキさんの横顔は、いつも以上に冷ややかに、ひたすら前を見つめていた。
……To be continued……
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次回:第25話 LAST⇐
✱最終改稿日:2020/11/01
※次回は第1章最終話です。
第2章の予告付き。
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