第19話 ANOTHER⇐


「ははっ、こんなに早く出番が来るとはなあ、シオン」


「はい、驚きました。この程度か、と。

 それに、さっきの動きを見ていた限り、あの騎士、それ程強そうには見えませんでしたよ。なぜロキさんは彼を〈DAYBREAK夜明け〉に入れたがっているんですか?」


「さあ、どうだろうな。ただ……ロキが個人的に勧めてきたのはあいつが初めてだ。そんな奴があの程度で終わるはずがない」


──────────…………………………


 そうして迎えた練習試合エキシビションマッチ2戦目。


 ハクは装備無しで、DAYBREAK夜明け最強の男のチームを相手にする。


〔……何だ? あいつ装備してないのか〕

〔そうみたいですね。

 だったら速攻、私が弓で仕留めますよ〕

〔いや、でもあいつ……〕


 カリアスはハクの雰囲気がさっきと全く違う事を感じ取り、眉をひそめてじっとハクを鋭い目で見つめる。


〔……いや、やはり俺が様子を見よう。

 シオンはレンヤを狙え。感覚系を封じられたレンヤなどお前の相手では無いだろう?〕

〔……はい。分かりました、団長〕


 一言も喋らず、何の構えもしないハクに対して、カリアスは警戒心を珍しくMAXまで上げて、斧を握った右手にさらにぐっと力を込める。


 そして、そのカリアスよりもさらにハクの雰囲気の変化に驚いているのが、同じチームのレンヤだった。


 初め、カチッという謎の音を立てたハクは、しばらくの間、目を瞑り両手を身体の横にスっと置いた自然体の構えで、ゆったりと瞑想しているようだった。


 そして彼は、突然カッと目を見開いたかと思うと、さっきとは別人のような殺気を放って、何も言わずにカリアス団長の事を見据えている。


〔……ハク、聞こえるか〕

〔……〕


 ハクからは何も応答が無い。レンヤは、軽く聞き流していたさっきのハクとの会話を思い出し、今になって背筋が凍りついた。


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「あの、連携を無視しても良いですか?」

「……え?」

「もし暴走した場合は、何人かけてでも、心臓さえ刺して下されば止まりますんで」

「あ? 何人かけてでもって……。

 そんなに強いのか? お前は」

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 意味が分からなかったハクの提案を適当に了承してしまった事に、レンヤは今更ながら後悔して、深く溜息をついた。


〔おーい、ハク。

 説明が足りていなかったぞ〕


 応答が無いのを分かっていながら、遊び心とわずかな期待を持ってハクに声をかけるが、彼は聞こえていないどころか、少し口角を上げて冷ややかに微笑んでいる。


〔はっ……もう知らねえ。勝手にしろ〕


 レンヤはそのハクの表情を見てもう一度身を震わせた後、完全に諦めると、腹を括って自分の盾と槍をいつもより前目にどっしりと構えた。


          


「……ふふっ、面白くなりそうですね」


 団長にハクを紹介した男が笑う。


「おい、ロキ。なんなんだあいつの殺気。

 俺はさっきから寒気が止まらんぞ」


 そう言いながら、観客席にいたナツは慌てて立ち上がっていた。


「ええ、あれが私がハリアットで見かけた時の『ハク』です。強いですよ、は」




 そしてついに、対戦開始バトルスタートの合図が鳴った。



(スイッチを入れたの間違いだったかな? 

 でも、ずっと強い相手にを試してみたかったから、俺も楽しみだ)


 

 俺の用意していた秘策とは、手動でスイッチを入れて自分よりも圧倒的に強いもう1人の方のをカリアス団長にぶつけたらどうなるか、という実験混じりの大博打。

 



〔……ふっ〕


 そしては、久々の対戦を前に控え、この上なく高揚しているようだった。









       ………To be continued……

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次回:第20話 SECRET⇐

✱最終改稿日:2020/11/01

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