第15話 EXHIBITION⇐
夕食後。
俺は〈
『騎士以外立ち入り禁止』という赤い文字の書かれる紙が貼られた白壁を横目に通り過ぎて、そのままその部屋の中へと足を踏み入れると、ヒュッと素早く風を切るような音が聞こえてくる。
そこは青色の幾何学模様に囲まれた立方体の部屋で、恐らく騎士団員の室内訓練場といったところだろうか。
地面に埋め込まれるように立てられた数枚の電子ボードには、装備毎のダメージスコアランキングが乗せられていて、ここの騎士団員達の切磋琢磨し合いながら努力している様子が
俺は久々のゲームっぽさに何故かどぎまぎしながら周りをキョロキョロと見渡していると、再度ヒュッという風の斬られた音を耳にして顔を思わず音の方へ向けた。
すると目の前に、
一本の白い線が光のごとく通過する。
俺は、図らずもその線の終わりの方へ向けられていた顔を、ゆっくりとその始まりの方へと動かした。
(……)
そこには、身体付きに不相応なほど巨大な弓を姿勢良く構える、一人の華奢な女性が立っていた。
肩まで届く艶やかな髪から覗かせる、鋭く的を見つめるその凛とした横顔は、女性らしさというものよりも、逞しく強い男らしい印象を俺に与える。
「ははっ、やはりシオンの弓は一級品だな」
「あ……団長。申し訳ありません」
彼女は俺たちが来た事に今気づいたのか、驚いた顔をして頬を赤く染めている。
(すごい……集中力)
「いや、久々に見れて良かったぞ。
あ! 紹介しよう、こいつは『シオン』。
この騎士団の参謀だ」
(……っ! この女性が残り一人の幹部!?)
誇らしげに俺達の方へ微笑を浮かべると、団長はさらに言葉を続ける。
「後は……そうだな、幹部達がここに集まってから説明しようか」
(え……ここに?)
俺とレンヤさんの困惑した顔をちらっと見て、カリアス団長はまた
(DAYBREAK《夜明け》の幹部)
それって、団長の──
(あ、あれ? 俺、
「あの、まだ団長の名前を──」
「ぶはっ、そういやぁ、言ってなかった。
俺の名前は『カリアス』だ。よろしく!」
(カリアス……団長か、気を取り直して)
団長:『カリアス』
副団長:『ロキ』
軍師:『ナツ』
参謀:『シオン』
(これが
「すみません、団長。お待たせ致しました」
「お待たせーっす」
考え事をしているうちに、聞き覚えのあるふたつの声が俺の耳に届く。
振り返るとそこには、さっきとは服装の違うロキさんとナツさんが興奮をチラつかせた笑顔で
ロキさんの服装は先程の黒スーツではなく、黒い軍服に
そして、ナツさんの方は元々あまりピシッとした服を着ていなかったせいか、軍服を着て褐色のマントを羽織るとガラリと印象が変わり、物凄く仕事のできそうな印象になった。
「おし! 揃ったな。では始めようか。
今から俺ら幹部4人とお前ら2人で
(あー、バトル。──って、んん? ……幹部達と
「え……なに急に──」
「そうやってまた、目をつけた新兵を〈
突然飛び出した
「ん……まあ、そういうことになるかな。
単刀直入に言おう。
(え……? 入団の誘い?)
Sランクの騎士団からの勧誘など普通なら滅多にない事だろうし、断る理由なんか無いけれど、なんか怪しい。それに、まだこの騎士団の事をよく知らないし……。
(んー。ちょうど入る騎士団を探していたから、悪くない話ではあるけど──)
「──分かった。お前がもしこの騎士団にどうしても入りたくないというならば、2対2の
(あれ? 俺何か答えたっけ? いや、今のところ別に……入っても入らなくてもどっちでもいいんだけどなぁ)
俺は率直にそう思ったが、そんな事を言い出せる空気でもなく、仕方なくその
(まあどっちに転ぶかは運に任せてみよう。
本気でやってみて決まった方ならそれでいいや。ふふっ、なんかよく分からず巻き込まれたけど……楽しそうではあるかな)
「よしっ、招待したぞ」
──ピピッ
『騎士ユーザー『カリアス』主催の
YES⇐
NO
────── Now Loading ……─────
次回:第16話 SETTING⇐
✱最終改稿日:2020/11/01
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