第9話 SEARCH⇐
◇ソメタナ◇
「あっ! ハク、戻ってきたの?」
拠点にしている村に戻ると、早速俺を見つけたランスが駆け寄ってきた。
「おお。ランス!」
「ハク、コロシアムはどう──」
「ちょうど良かった」
ランスはあからさまに首を傾げる。
「……ちょうど?」
その後、俺は普通の会話を
「えっ!!!」
「しーっ!」
驚きにランスが大声を上げると、俺も慌てて大声を重ねて注意する。もはや他の村人にすら隠せてはいない。
「あ、ごめん。えっと──じゃあ『フィン』を紹介しようか?」
「ん? ……あ、この前言ってた女性か?」
相談に乗ってくれたランスが、俺をこの村唯一の情報屋★★★である『フィン』という人物の所に連れていってくれるという。
フィンさん。その人はまだ若いのに、この村で一番頭がキレるというので有名な人物。
(この村にワープして以降、もう誰かにつけられている感じはしていないが一応、な)
「か」と小さく呟いて、スキルを発動。
[発動スキル:感覚系☆☆☆☆ ──
騎士達は基本的に、感覚系スキルのみ公道での使用を許されている。
(うん、やはり反応はない。巻いたか?)
俺は心のどこかでまだ警戒しながらも、スキルに反応が無かった為、少し安心した。
そうこうしているうちに、俺たちはフィンさんが居るという、この小さな村には不相応な研究所に辿り着いた。
──ガチャッ
「おお、ランスじゃないか!
久しぶりだなぁ。どうした?
このフィン師匠に会いたくなったのか?」
中から出てきたのは、出会って早々一方的に喋り倒す、もの凄く元気ハツラツな女性。
ショートカットの髪に綺麗系の顔立ち。
そして少しクールすぎるくらいの鋭い赤色の瞳に、俺は何故か緊張した。
しかし彼女は、この立派な研究所に反してあまりオシャレに気を使っている感じではなく、衣服も年季が入っており、ろくに睡眠もとってないような青白い顔色をしている。
「もう、違いますよぉ!
フィンさん、今日は人を紹介したくて」
「お? ……んああ!!!
お前、いつから居たんだ!」
「はははっ、ずっと俺の隣に居ましたよ?
彼は『ハク』という騎士です」
ランスに紹介してもらい、俺も口を開く。
「あの、初めまして。俺はハクと申します。
この度は突然の訪問──」
「あああ!!! 無し無し! 堅苦しいの嫌い!
分かった?」
そう言って彼女は、俺に悪戯っぽくニヤッと笑った。
「……で、ハクはどうしてここに?」
「あ、フィンさんが情報屋だと聞いたので少し調べていただきたい事がありまして──」
俺はそれについて細かい経緯を話した。
「──ってかお前、ハリアットのバトルコロシアムで優勝したのか! どこの騎士団?」
本題とは関係ない所に食いつかれる。
「はい、一応。騎士団は今探してる最中で」
「えっ? んじゃ、まだお前新兵なのか!?
ふはっ、面白いやつだな」
フィンさんはランスを助手のようにこき使い、何か調べながら俺と楽しそうに話す。
「……あ、マジか。これはいかん。
ちょっとごめんね。コンタクトするわ」
(コンタクト?)
話の途中、彼女の声のトーンが急に変わった。
『コンタクトを使用しますか?』
YES⇐
NO
(あ、
『使用する相手を選択してください』
[フレンドユーザー名一覧]
〇 ……
〇 ……
●レンヤ
〇 ……
〔── ザッ ── ガチャッ……なんだ?〕
聞こえてきたのは不機嫌そうな男性の声。
「もっしー、レンヤ? 今、ランにいる?
ちょっとそこで
〔は? はあ、なんなんだ急に〕
(あはは。これはまた一方的に)
『レンヤ』と呼ばれた人とコンタクトをとるフィンさんの横で、俺とランスはこのよく分からない状況に顔を見合わせて、苦笑いを浮かべている。
〔ああ……うん、いるな。しかも
「がぁ、やっぱりか。
そんな有名騎士団がこの新兵の後をつけてきたとすれば──はっ! おい、ハク! 今すぐランへ向かうぞ!」
「ら、ランですか? ランならちょうど拠点登録(※詳細は次回)してありますが……」
そうしてソメタナに戻ってきたばかりの俺は、再びこの地を去り、ランという俺の4つ目の拠点へと向かう事になった。
◆
「……ええ。予定通りもうすぐこの街にいらっしゃると思いますよ。その為にわざとらしくストーキングしておきましたので」
……To be continued……
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次回:第10話 KNOCK⇐
※最終改稿日 2020/09/30
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