第4話 READY?⇐
翌朝。
地響きのような熱気と歓声に包まれて、俺の3年目にして初めてのバトルコロシアムが幕を開けた。
『さあ、始まりました! バトルコロシアムinハリアット。今回もエントリー総数128と大規模なイベントとなりました。皆様、本日より2日間よろしくお願い致します』
(お! 昨日からまた増えたな)
『予選は今大会も4ブロックに分かれて、トーナメント戦形式で行っていきます。それでは早速、エントリーナンバーが4で割り切れる方はAブロック。4で割って余り1の方はBブロック。4で割って余り───』
(103……俺はCブロック。
予選会場は本会場とは別の闘技場らしい)
俺は予選トーナメントに参戦する為、本会場を円形に取り囲む四つの小さな闘技場のうち、北に位置するひとつへと足を運んだ。
会場に続々とCブロックの騎士達が集まって来る。次第にガヤガヤと騒がしくなってくるこの闘技場。
俺の周りは、騎士団に属している者同士で交流があるからなのか、そのほとんどが知り合いかのように談笑していた。
『それでは早速、今大会の予選トーナメントを始めていきましょう! 皆さん心の準備は既に出来ていますね?』
「おおおおお!」
煽るコンピュータに呼応して、騎士達は大いに盛り上がっている。
『では、最初の対戦! まずはこの2人!』
(ふぅ。さてと……出番が来るまではじっくりと、敵情視察でもしてみようか)
──ピピッ
Cブロック 1回戦 第1試合
No.79 『トーリ』 VS No.103 『ハク』
突然会場にある電光掲示板が光り、見覚えのある名前が表示された。
(ん? ああ、『ハク』か。びっくりしたぁ、一瞬俺かと思った…………って俺じゃないか! よりによってトップバッター!?)
「トーリ、お前トップバッターじゃねえか!
相手の奴の名前ランキングでも見た事ないし、噂ですら聞いた事ないよな? どんな奴か分からんが、お前なら間違いなく勝てるんじゃないか?」
『トーリ』という対戦相手が、笑いに包まれながら皆にいじられている。そんな中、俺は1人で戸惑いと僅かな緊張を纏い、バトルの準備へと向かった。
そして俺は10分後、他の騎士達が観客席から見守る中、準備を済ませてレンタルした馬に跨り、再度そこへ入場し直した。
しかしその時、会場が大きくどよめく。
(や、やはりこんな格好は……)
──────── ◀︎◁◀︎◁ ────────
昨夜。
「おい、兄ちゃん。
名前は『ハク』って言ったか?」
鍛冶屋のロイドさんが俺に尋ねる。
「はい、ハクです」
「そうかハク。何の武器でエントリーした?」
「あ、えと……今回は、槍と盾にしました」
「おっ! そうか! そかそか」
ロイドさんは何度も頷いて、なぜかあからさまに嬉しそうな表情を見せる。
「じゃあ、これとこれをやろう」
そう言って、両手に持ってきたのは、家の壁に大事そうに立て掛けてあった、持ち手に白いテープが何重にも巻かれたとても大きな黄金色の槍と、銀色に輝く立派な円形の盾。
「え? 売り物ですよね? いいんで──」
「いいんだ。俺は気に入った奴には強くなってもらわな気が済まない性分だからな!
……あっ! だからあとついでにこれもつけといてやった」
──────── ▷▶︎▷▶ ────────
そして、最後に軽々しく付け足されたそのついでが、俺を今こんな目に合わせている。
「おい、あいつ新兵だとよ」
「ぶはっ、俺はああいう奴好きだぜ」
「恥さらしだっつうの! ははっ」
(わ、笑われている。逆に清々しいほどに)
皆の視線が降り注がれているのは、絶対に俺の羽織る黒いマント。
そう、ロイドさんがくれたついでは、黒地に『新兵の下克上!』と真っ白な字の刺繍がされた、手作りマント。
(受け取ってしまった以上、つけないわけにはいかなかったが…………
恥ずかしい! 想像以上に恥ずかしい!)
“俺はお前の事が気に入っちまったんだ。
だからこれ着て頑張れよ、新兵『ハク』!”
ロイドさんの優しい笑顔が脳裏を
「では新兵ハク。頑張らせていただきますよ」
『さあ、ルールは簡単。現実世界で死を与える程のダメージを相手に与えた方の勝ち!判定は
そうして俺は、フワフワと浮足立たせる謎の緊張を押さえつけながら、奇妙な歓声と野次に背中を押され(?)、相手に向けて槍と盾を力強く構えた。
……To be continued……
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次回:第5話 SWITCH⇐
※最終改稿日 2020/09/29
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