第2話

俺こと、工藤真一(17)は、俗にいうヘタレではあるが、一度決めたらやってやる。みたいな気概はある。

つもり。

某名探偵と音は同じ同姓同名なだけあって変わってるかも。


今日は土曜日。

陸上の部活も大会が終わったばかりで今日は珍しく休みでよかった。


母さんはパートで朝七時には家を出て、夕方までいないし。


父さんは俺が一歳の時に離婚していない。



さて。いざという時に何とか誤魔化せるようにキャップをかぶりマスクをしてから、迷彩魔法を使い、姿を消して鏡に映らないのを確認してから家を出た。

徒歩で行ける近所の総合病院に足をむける。


この病院を選んだ理由は、この近所で一番大きい病院だから。


小さい頃からかかりつけで、ここらの人は歯医者も風邪も大抵この病院にかかる。


小児科病棟には心臓疾患を患う乳幼児もいるって話を聞いたことがあったし。

「小さな体に、チューブの針を刺されていて見てられない」と、友人の出産祝いに病院に行った母から話を聞いたのを思い出したから。




(いざ。・・・ドキドキする。本当に、病気が治せれば。

白血病は遺伝子レベルの異常だけど、《解析魔法》と《鑑定魔法》があるおかげで何となくできそうだし。

・・・うん。弱気になってどうする!

救世主になるんだろ!覚悟決めろ!俺!!)




───とか、意気がってたけど、よーく考えると、1人1人治療するのは大変だ。って思った。

必ずしも患者が病室にいるわけじゃないだろうし。看護婦や医者、見舞いの家族もいるだろう。始めてやる事なだけに時間もかかる。


(うーん・・・)


俺は世界の患者を救いたいんだ。

地球環境も改善したいんだ。

戦争もなくしたい。


時間かけらんねぇ。



(範囲魔法あるじゃん。あれでパッとやろう!)


病院の敷地前。通行の邪魔にならないとこに立ち(人には見えないけど)、病院ごと、敷地内を囲うような、漫画やアニメとかのチートな奴がやるようなドームのイメージ。

健康的な、笑顔でいるのをイメージして。



「《状態異常回復》《遺伝子正常回復》《身体欠損回復再生》」


すると。

地面から沸き上がるように、白金の優しい光の洪水がサアッっと辺り一面、病院の建物が見えないくらいに上に光りを放ったとたんに、通行人や車、通院の人たちがざわめき驚く。


「きゃあッ!?」「うわッ!?」「な、なんだッ!?」





「・・・すげぇ・・・・・・。今の光、みんな見えたんだ・・・」


(ちゃんと治ったかな・・)



今の光はなんだ!?と大騒ぎの中、キョロキョロしながら病院へ入ってみた。


病院の中でも受付や待ち合い所でもみんな騒いでる。



「目がハッキリ見えるのよー!眼鏡いらないわ!かけたら逆に目も頭も痛くなるの!これ視力が戻ったのよね!?ねっ!?

さっきの光!眩しかったから眼鏡外したらこうなのよー!」


オバさんが隣の人に興奮ぎみに喋ってる。




「ワシ、膝の痛みがのうなった!」


オジサンが興奮して唾飛ばしてる。汚いな。

でもよかったな。




「頭痛くないよ!熱ないよ!おかあさん!」


小さい幼稚園児くらいの女の子がおでこに熱冷まシート貼ったまま母親に元気に報告してる。微笑ましい。




「足!足痛くない!足の怪我が治ってるっぽい!!え!?な、なんで!?」


「○○ちゃん!ちょっと!無理しないで!」



「だって痛くないもん!ほらぁ!足!」



体操服とジャージ姿の松葉杖の中学生女子の子が付き添いの母親らしい人と騒いでるし、医者や看護婦たちもバタバタ走り回ってる。

どうやら重篤患者の意識が戻り、普通に喋りだし、起きたとかで、医者や看護婦たちも大声であちこち指示だしたり連絡いれたり、待ち合い患者たちの対応とパニックだ。




(よかった。マジでよかった。やってよかったんだよな?

初めてだし、不安だったけど・・・)


長居は無用だと思い、俺は立ち去った。





(結局どこまでの範囲、できるのかな。

病院の敷地内、余裕でいけたけど。リスクってマジでないのかな)



ダルさもないし、何ともないのがかえって不安になる。


あるあるで、自分の寿命が減ってたりしてな。



「怖」




ま、それでもやるけど。




俺はそれから何となく、第六感みたいな勘が大丈夫だと告げていて、家に帰ると、自分の部屋で社会の地図帳を広げ、今いる自分の県を範囲指定イメージして、やってみたら、地図上の県が、白金に光を下から上に光放ち。


自分や部屋の中、いや、窓の外も優しい光にのみこまれた─────





夕方のニュースで、【奇跡の光】の話題をニヤニヤしながら観た。




「日本いける。マジで」





ガチャン



「ただいまぁー!あ!いい匂い!カレー作ったの?」



母さんが帰ってきた。




「おかえり。そ。カレー作った」


たまに俺は簡単なカレーとかチャーハンとか作る。

うちは母子家庭で、母さんに少しでも楽してもらいたいから、喜んでもらいたいから、学校で習ったやつ限定で、小5の時から晩ごはんはたまに作ってる。

凝ったもんは作れねぇから、まぁ、その時の材料次第だけど。



「今日の光!突然凄かったね!?【奇跡の光】!

あちこちでね!病気とか怪我とか治ったンですって!

私も仕事中に光ってビックリしてね!肩凝りとか膝とか偏頭痛が治ったのよー!」



母さんも興奮してる(笑)

母さん、偏頭痛もちだもんな。

よかった。




「らしいね。めっちゃビックリしたよ。俺も」



「ね!みんなビックリよ!」



母さんの仕事先でもさっそく話題になったらしい。




「母さんも無理はすんなよな」



「うふふ。大丈夫。心配してくれてありがとね」




にっこり俺に笑う母さんの笑顔が、俺には超超うれしい。



みんなが笑顔で幸せになればいい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る