現実にチート魔法が使えるようになったので
天野
第1話
思わず。そう、とっさに思わず中二病ではないが、ファンタジー系のラノベを日々多く読み過ぎていたからか自分でもわからないが、その時はただただ必死だったんだ。
「───うぅうッ!・・・ヒッ!ヒール!(《回復》ぅッ!)」
ドアの角で足の指を強かに打ち、悶絶し、あまりの痛みに神頼み的に思わず力んで涙ぐみながら思わず。思わず《ヒール回復》と思いを力いっぱい込めて口をついて言ったのだ。
家に自分以外は誰もいない。
恥ずかしくなかった。
それどころじゃない痛みだったから。
それが。
「ううぅーッ!・・・ん?あ、あれ・・・??」
ぎゅうっっと目をつむっていたが、瞼越しにパアッっと光って眩しくて。
痛みがなくなって。あれ?っと思って。
うずくまって足先を握ってた手を、おそるおそるゆっくりと、そぉーっっと、開いた。
部屋の電気はついてない。
昼間だし。
「??な、なんともなってない??あれ??」
足の爪や指は、まったく赤くもなんともなってなくて。
痛みもあれだけ痛かったのに、もう何ともない。
首をかしげるしかなかった。
「ま、まぁ、よかった。あー痛かった!爪剥げたかと思ったー!」
その場にペタンと座り込み。安堵し笑う。
「俺馬鹿じゃね!《ヒール》て!(笑)」
パアッっと。
「わっ!?わわッ!?」
気持ちを込めて言ったとたん、自分の体が数秒光った。
ビックリ!!!
白金の光だ。
「・・・マ・・・ッ!ジでえぇッ!!!!???」
すっとんきょうに絶叫。驚愕。
ムンクの叫びのごとく。
マジで。いやマジで魔法が使え・・・・・・るッ!?
いわゆるラノベ的な異世界転生でも、転移でもなく。
現実に。リアルに。
ま、魔法・・・・が。
なぜ!?俺がなぜ!?
なんかあげて落とすみたいな、神様に罠にハメられたりして!?
キョロキョロと焦って恐くなって周りを見回すが、誰もいないし、変わったこともない。
いや、他にも突然覚醒した人間がいたり、突然ダンジョンが現実世界に出現したり。魔物が出たり。
ラノベで最近多数出てきだした話があるし。
そりゃあ大好きだけど!ファンタジー系、中ニ病系は!!
自分だけ魔法が使えるなんて、んなうまい話・・・。
────あれからスマホで日本や世界に異変がないかググッってみたが、特に気になるようなニュースはなく。
家を出て、近所も何事もない、通行人は普通に歩いてる。
車もバイクもチャリに乗ったヤツもみな普通。
日常。
(と、とりあえず確認しよう!どっか人がいねぇとこ!広いとこ!)
人のいない、迷惑をかけないような場所を探し、ガキの頃、遊んだ近所の裏山に少し登った。
最近は大人も子供も山なんかには来ない。
昔は畑があったし、タケノコや山菜取りにオジサンオバさんがいたが、今は高齢化が進んで、子供は塾か家でゲームだ。
誰も登らんし、なんとかわかる獣道っぽくなっちまってる山道は草ぼうぼうだ。
俺は趣味で今までの、観たり読んだりしてたラノベやアニメ、ゲームの魔法を参考に片っ端からネットで調べて、実際に出来るか検証した結果、3時間後。
「とんでもねぇぜ・・・」
イメージした魔法さえも可能だった。
水、手のひらからバシャーって。
指先からチョロチョロ、ポタポタイメージ一つで変化しでるし。
マジでパネェ。
なんなんだ。
怖いし。俺自信。
非現実だし、夢みたいで現実。リアル。
でも、と。わくわくもしてる。
ファンタジー用語を口にするのは恥ずかしいから、日本語で言ったり、喋らずとも普通にイメージ通りに《こうなれ!》っていろんな魔法がまんまイメージ通りの強弱で使えた。
念入りに、慎重に、いろいろ検証していく。
暴走したらヤバイしな。
火は特に。山火事、怖いし。
自分の周りの重力と風を操作し、上手く浮遊もできたし、周辺の探知魔法もできた。
土も土壁が土遁の術みてぇにできた。
探知魔法を併用して瞬間移動も危なくなくできた。
物の中に重なって瞬間移動したりしたら、俺死ぬし。
んな事態にならないように、体が自然に覚えるように、必ず探知魔法してから、瞬間移動を繰り返した。
光彩操作で姿を屈折した景色に同化し、姿を消し隠れることもできた。
自分の手が、体が、映画で観たプレデターみたいだった!
いろいろやったのに、魔力が枯渇し脱力感におそわれる、なんてことも全くおこらず、魔力を使っているのかさえ自覚がなくてわからない。
いや、【魔法イコール魔力】と普通に考えるのはダメなのか。
そういった知識はラノベに影響され過ぎてるし。
所詮空想だしな。
そもそも地球の空気中に魔素的なものあったのかよ?って疑問だし。
いや、この魔法事態なのも魔素が使われてるのかもあやしくなる。疑問だ。
そう考えると、《ナビみたいな存在》出ろ!とか《神様の知識》みたいな魔法とか、《神の図書》みたいな魔法とか使えろ!って強く思った。ら。
お約束な《鑑定魔法》の情報が更に詳しくなったという結果に。
まぁ、いろんな可能性は広がるのかな。とひとまず納得。
お約束な《ステータス》は見れない。
─────謎だ。
家に帰る。
魔法が使えるようになった。
ゆっくり今後、どう生かすかを考える。
治癒が使えるなら。
癌患者、白血病患者、アルツハイマー・・・欠損、治せないかな。
昔から、よく思っていたことだ。
異世界でチート魔法が使えるなら、俺は現実世界でチート魔法を使いたいと。
不治の病の人を助けるのにと。
耳が聞こえない。目が見えない。喋れない。色がわからない。
手足が不自由。
ダウン症。
テレビの向こうで、それでも懸命に生きて幸せを見つけてく人。家族。
小さな子が、ずっと病院で学校にも行けず、友達も作れず、ドナーが現れるまで、家族に莫大な入院費や手術費用の苦労をかけてる負い目をもってる子だっているだろう。
ドラマの観過ぎかもしれないが。
治せるなら。治してあげたい。
元気に走り回れる幸せを。
子供が望めない、若い女性だって。
そうだ。若ハゲに悩む人もいるよな。
毛根治療したら髪、ふさふさになるかな。(笑)
昔、予言みたいな内容の本を読んだことがずっと頭に残っていて。
【ラッパを吹く終わりを告げる天使と共に救世主は日本に生まれるだろう】
だから、歴代のローマ法王はよく日本を訪れるのか。
そう思ってた。
救世主を探してるのかも。なんて。
───俺が。なってやる。
核を消し、銃を消し、宗教なんかでいさかうことなく。
隣人を愛せよ。なんて。無理強いして言わないが。
心から笑って生きようぜ。
地球が悲鳴をあげてっしさ。
温暖化もヤバイからな。
海にのまれて消えてく運命の小さな島も。
助けたい。
できる範囲で。やれるなら。
俺が突然魔法を使えるようになった何かしらの意味はあるはず。
犯罪者じゃなくてよかった。
なんか、俺でごめん。
さて。姿を消して。
先ずは近所の病院からさっそく回ろうかな。
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