第99話「シールド明」

[花咲:出かけるって言ってくれたら一緒に行く]

[紗衣:分かりました]

[花咲:どこ行くんだ?]

[紗衣:フラワーパーク行きたいです]

[花咲:オッケー。今度の休みが被ったときな]

[紗衣:わーい]


 スマホをテーブルに置き、一息つく。

 ていうか、フラワーパークってどこ?


 ――紗衣ちゃんと出かける日になった。

 ネットで調べたら意外と近いところにフラワーパークはあるようだ。

 待ち合わせ場所に着き、チャリに跨っていると程なくして紗衣ちゃんがやってきた。


「あ、今日はズボンだ」

「スカートの方が良かったですか? 今から着替――」

「いいいいっ。ほぼ冬なんだからその方がいいよ」

「フラワーパークだから」

「賢明な判断」


 出会いのやり取りを終え、バス・電車を乗り継いでフラワーパーク。

 秋に咲く花でお馴染みコスモスが視界に広がった。

 ニュースで見た景色を今目のあたりにしている。


「き、綺麗です」


 紗衣ちゃんも感銘を受けているようで、目をキラキラさせて呟いた。

 今度高林さんと来たいな。


「そうだな」

「見渡す限りのコスモス」

「写真撮るか」


 そう言って俺はスマホを構える。


「珍しいですね。花咲先輩が……て、あたしと一緒に撮るわけじゃないっ」


 キレのある突っ込みをしてきた。

 そこまではしませんよ。お出かけといったじゃないか。

 デートだったら一緒に映るように撮るけど。

 あくまで今日はお出かけ。


「突っ込みをありがとう。今日はお出かけだから花を撮る」

「くっ……」

「紗衣ちゃんは可愛いんだから俺なんかより良い人がいるよ」

「……凪君だってかっこいいです」

「それは、明よりはね」

「お兄ちゃんは比較にもなりません」

「言ってやるなって」

「……ぁ。凪君」


 上ずった声を出す紗衣ちゃん。

 良からぬことかと思いつつ「ん?」と答えておく。


「友達としてならツーショットオッケーですか?」

「特別だよ?」

「やったぁ」

「ん〜、ざっと百万?」

「高すぎるっ」

「ナイス突っ込み。コスモスをバックに撮る?」

「はい、そうしましょう」


 あ、しまった。

 スマホの写真に入るようにするには密着しないと無理でしたわ。

 割り切るしかないよね……。



 ☆ ☆ ☆



 自慢されて修羅場じみたことになるかと思ったけどそんなことはなく修学旅行に持っていくお菓子を買いに行く日になった。


「なに買う?」


 スーパーのお菓子売り場に着いて美沙が商品を見ながら誰に言うでもなく呟く。

 こういう場合返答をしないといけないとテレビでこの前やっていた。


「あまり大袋持っていくと大変だぞ」

「わ、分かってる」


「……お腹……いっぱい……ならない方が……いい……」


「お菓子で?」

「……お菓子で……」


 なに明のくせに高林さんと話してるんだよっ。

 なんか分からないけど、イラッときた。


「ところで、場所はどこなんだ?」

「え、知らないの? 寝てたの?」

「違うからっ」

「声が大きいっ」

「ごめん」


 周りの視線が一様にこちらに集中しているのが分かる。

 明の身体を盾にして視線に耐えよう。


「にしても、凪のところなにも情報が回ってないよね」

「困ったことにな」

「でね、今年の行くところは九州で、基本自由なんだって」


 やった。いつものメンバーで確定ですね。

 喜びはこいつらに見せないようにしよう。

 なんかプライドが邪魔をしている。


「ほぼ生徒に丸投げじゃないですか」

「そういうこっちゃ」


「良く言えば信頼されてる?」

「……とりあえずお菓子買おうぜ」

「だな」


 聞こえよく言ったらそうでしょうな。

 呆れてもう言葉が出てこねぇ。

 美野里さんの分も買っておこう。もし買ってきてなかったら気まずいし。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る