第45話「破壊力抜群のスマイル」

 今年の冬は暖かくクリスマスが次週まで迫っていると言われるまで頭に浮かんでこなかった。

 クリスマス前の週の日曜日。今日はプレゼント選びを敢行中である。


「バイトしてるからってプレゼントを全員分選ぶとか小堀のもらってる給料俺らと違うんじゃないか?」

「まさかそれはないだろ」

「にしても、この年にして親の気持ちを理解するとは思わなかった」


 陳列された商品を見つめながらため息混じりにゴニョゴニョ言っている。

 適当に決めるかというイメージだがこの子意外としっかり選ぶタイプなのよ。

 ていうか、彼女いるとか言っていたけど、俺らとよろしくやる感じでいいのだろうかね。


「なににしていいかわからないってことか?」

「そういうこと」

「へんちょこりんのものじゃなければ大抵は喜ばれるって」


 もらえることに意味があるから。

 それは大人になろうが変わらない。


「……はぁ。やっぱり一人で考える。俺達のは今選んでおこう」

「オッケー」


 なんか今呆れられたが今日はスルーしよう。


「なにがいいよ?」

「俺正直言ってプレゼントよりもケーキ食いたい」

「持っていくときぐちゃぐちゃになるけどそれでもいいなら」

「チャリのカゴに入れてくればなんとか行けるだろ」

「どんだけ食いたいんだよケーキ」

「むしろぐちゃぐちゃでも食いたい」

「ていうか、家でケーキでないのか?」

「出ることを祈りたい」

「あ、そっか。そっちの母さんケーキ苦手なんだっけ」

「だからケーキをお恵みください」

「分かりました」

「紗衣ちゃんは可愛いの好きか?」


 急に真面目に選びだした花咲に新川ついてくる。


「好きだと思う」

「おし、紗衣ちゃんはキーホルダーにしよ」

「いいんじゃないか。高林さんはどんなの好きなんだ?」

「んー、可愛いの好きなんじゃないか?」

「付き合ってるなら好きなもの分かるだろ」

「だから、付き合ってないって何回も言ってるだろう」

「信じがたいな~」

「勝手にそう思ってればいいさ」


 プイッと新川から背を向ける。その後もすったもんだやりつつ選び終える俺達であった。

 店員さん方申し訳ないっ。



 いつもの面々を招待してクリスマスパーティ。

 一次会の食事は終了。ケーキを食べ終えてプレゼントも渡し終わり子どもはお開きとなった。

 大人達は、小堀家で二次会をやっていることだろう。


 この中で一人で家路につく高林さんを送ることになった。

 と言っても、バイトでもう毎回そうだから慣れたもん。

 玄関を開けると、白くゆっくり落ちてくるそれ。


「お、雪だ」

「……ホワイトクリスマス……」

「寒いな。雪降るだけあって」

「……コク……」

「傘さすから近く来て」

「……もう一個は? ……」

「使っててないみたい」

「……このくらい? ……」

「お、おう。そのくらい」


 歩いて高林家へ向かうことにした。

 カッパ持ってきてないってことだから歩くことしか選択肢がない。

 体温を感じる距離。相合い傘をするのってなかなかハードだね。ドキドキドキドキと胸がうるさい。


「……あ、あのっ……」


 と、心臓の黙らせ方を考えていたら声をかけてきた。

 屋根のある玄関まで送り届けたので、高林さんの大きな声にちょっとびっくり。


「? どうした?」

「……プレゼント……ありがとう……」

「……こっちこそっ」


 まさかのプレゼントかぶり。

 初めて見る莉音奈の笑顔に花咲はハート撃ち抜かれてしまったようだった。




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