第22話「決意する案件ですわ、これ」
「なにが言いたい」
「絶対領域。生足の部分がエロ――バシッ
「人の幼なじみをそういう目で見るなっ」
「痛いし。自分はどうなんだよ。エロく見えないのか?」
「見えるに決まってるだろ!」
「素直でよろしい」
偉そうに腕を組み頷く明にイラ立つ。
今に見てろよ……。こいつの色恋沙汰になった暁には倍返ししてやるから。
☆ ☆ ☆
今日はバイトがある。
この間高林さんの話が出てぶり返した告白された事実に気まずさを抱いていたり。
支障が出てしまわないといいんだけど。
今営業所で他のところで言うところのミーティングを受けている。
「今日は莉織奈が依頼主から指名されてるから一応花咲君同行して? なにがあるか分からないから」
「分かりました」
「……行こう」
「了解」
今日は終わるのが早い。
いつもなら先方が怒らないかと思うほど長いミーティングなのに。
もしかしたらそういうのがダメな依頼主なのかもな。
営業所を出て、しばらく。依頼主と待ち合わせした場所へ到着した。
「あ、なんでも屋ですね?」
「……はい……」
「今日は、ちょっとお願いがあるんだよ」
良くない流れなのかしら。パトカーのサイレンが遠くで鳴っている。
胸騒ぎがしてならない。
ていうか、この男の人からいい人ぽいオーラが一つもないのよ。
「お願いですか?」
「ちょっと今ストーカーされてて」
「え、マジですか」
ストーカーされてるやつがこんな開けたところで待ち合わせするか?
リスキーにもほどがあるだろ。怪しい怪しすぎるぞ。
「うん。だから君はちょっと離れてて」
「分かりました」
ここは一つ俺もはったりをかまそう。
嘘に気づいてない体。
依頼主が嘘をついてるのはもう確実なんでね。
ただほんの数ミリホントにストーカーされてるのもあり得るから手のひらの上で踊ってもらおう。
「手を繋いでデパート付近まで歩いてくれればいいから」
「……はい……」
「君はここで待ってて」
そのようにいって依頼主は、高林さんの手を握り歩き出す。
数ミリもホントのことは言ってない。
待てと言われて待つやつがどこにいると思っている。
もしものために動画サイトを開いておこう。さっきパトカーが遠くを通っていたっぽいがそれが近づいた思わせるためだ。
スマホを手にしたまま二人を追う花咲は人気のない路地へ入っていってることに気がついた。
本格的にヤバいのではないだろうか。
「や、やめてください」
「……っ!? ……」
道が直角だったため死角になってしまった。
高林さんが普段聞いたことのない声を上げている。
「やっぱりあの男は初めてだったな。まんまと騙されてくれたよっ」
それはこっちのセリフだっ。あんな分かりやすいやり口で騙されるやつが……いや、でも騙されたようなもんか?
「いや! 止めてくださいっ」
「やっと君を物にできる。ほら、大人しくしてろ」
思いの外状況がかんばしくなかった!
高林さんは上半身をブラのみにされていた。
これは、マズい。依頼主の手は下半身の方へと伸び始めている。
「……っ……」
「いいねいいねぇ。その表情たまらない」
用意しといてよかった。動画サイトを立ち上げてパトカーのサイレン集を流す。
音量を最大まで上げて路地にサイレンが木霊した。
「ちっ」
それからが早かった。依頼主否キモ男は、一目散に逃げていき、俺ともすれ違ったが気にする余裕がないらしい。
「ほら、これ着ろ」
ちゃっかりあの男高林さんの服を持っていきやがった。
良かったわ、二枚着てきといて。
上に着ていたチェックの服を高林さんに渡す。
「……っ! ……」
一瞬なにが起きたか理解できなかったが、溝うちあたりからへそまでに衝撃と温もり。
どうやら抱きつかれたらしい。
肩からしか服を着ていないからダイレクトに肌を感じるんですけどっ。
「……花咲君……ぐすっ」
涙を流しながら高林さんが見上げてきた。
どうしよう。胸がドキッってなったよ!
これ以上見つめられたら胸が終わりそうだったので、抱きしめ返した。
この子を守っていく。莉織奈の背中をポンポン優しく触れながらそう決心する花咲であった。
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