第18話「ハートがブレイク」
「へぇ〜、そうなんだ」
「……まだ20%」
「そうなんだよね。朝作ったのはもう昼に売れちゃってるから、昼に作ったのが割引されてるって感じ」
「なるほど」
いわゆるフードロスを無くす作戦ですね。
凄いらしいからな、売れ残り。
「というわけで、まだシール貼ってないからお菓子とかデザート選んじゃお」
「飲み物はでかいの買っていこうぜ。家にコップあるから」
「じゃあ、お茶ね」
「えぇ、みんなでシェアするのにお茶?」
「お茶なら好き嫌い関係ないじゃん」
「万人向けってことね」
「そう。高林さんお茶平気?」
「……コク……」
まるで拒否権のない問いに頷く高林さん。
聞く前にあんなこと言われたら、首を縦に振るしかない。
「良かった。じゃあ、そういうことで」
笑顔を浮かべてお茶のペットボトルをカゴに入れる美咲。
ちゃっかりこの店のプライベートブランドのやつだし。
「お菓子は?」
「ポテチ。断然ポテチ」
「甘いのは?」
「チョコ。個包装のやつね」
「……取ってくる」
美沙の命を受け、高林さんがきびすを返す。
「高林さん。サンキュ」
「デザートは、ホイップクリームの載ったプリン」
「あ、美味しいんだよな、これ」
「それでいて安い」
「最強」
「そういえばさ、私バイト実はファミレスだったんだけど。新川には内緒にしといて。みんなに言いふらしそうで」
「分かった」
さすがにそこまで性格悪くないと思う。
ていうか、カゴの中が全部美沙仕様なんですけど。
あと、高林さんがいつの間にか戻ってきていた。
「高林さんも戻ってきたことだし、お惣菜コーナー見てみようかな」
「弁当あったらいいな」
「ここのお弁当美味しいから無いかもよ?」
「……あながちホントだから強く否定できないっ」
「……まだある……」
先を少し行っていた莉織奈が振り返りざまそう言った。
見ると程よい感じのバリエーションの弁当が並んでいた。
「良かった……」
「幸いにもまだ人だかりもない」
ま、迷うな。カード押して弁当が入る場所を作りながら美沙達と吟味していた。
――自宅へ帰り、花咲の部屋で先にお菓子を食べることになった。
「ポテチ箸で食べるって斬新だわ」
「高林さんいるからこの方が良いだろ?」
「まぁ、そうだろうね」
「当然とくくられちゃうとちょっとショックだわ」
「別に凪が汚いって意味じゃないよ?」
「いや、分かってるから」
改めて言われると逆のことを言われてるようで傷つく。
花咲のハートがブレイクしかけているのを知る由もない美咲は「そろそろこの話終わりにしない?」と提案。
それに彼は苛立ちを覚える。
「お前から言い出したんだろっ」
「そうだけど、アニメ観るために来たんであって。ポテチを食べに来たわけじゃないもん」
「……ウチのレコーダー容量多くて助かったな」
「あ、すり替えた」
「じゃあ、今日はお開きにしましょうかね」
「あー、ごめんごめんねっ」
美沙の腕をつかみ、立ち上がらせようとしている花咲に必死に謝罪を口にしながら踏みとどまる彼女。
うわ、凄い力っ。こっちが引きに負けて覆いかぶさってしまいそう。
「ったく。大人しくスルーしとけよ」
「へーい」
「……今日明が見せてきたのって何話だ?」
「いや、分からんし」
「だよな。推しアニメじゃなかったから俺も中止してない」
「……全部観る……」
まさかの極論っ。何話か分からないなら最初から観てしまえ理論。
2クールアニメだったら明日の朝方までかかりそうだけど。
「その手があったね」
「泊まる気ですか?」
「そうなります」
「美沙は大丈夫だとしても高林さんは平気なのか?」
「……大丈夫……」
もうね気にしたら負けか。
高林さんはもう一度止まってるしな、そういえば。
「そっか。じゃあ、弁当食っちゃおうぜ」
「そうだね。ゆっくりくつろぎながら観よう」
「……コク……」
話しながら弁当を温め再び自室へ戻る。
ヤバい、弁当が三つもあると臭いがこもるのなんの。
窓を開けて換気する。少しはマシになるだろ。
「凪はカツ丼にしたんだ」
「ここのカツ丼はやばい」
「え、一切れ良い? 箸のでいいから」
実は箸が美味しかったりするが、もう一つ話しがあったので今回は寛大な気持ちで美沙の弁当へ渡した。
「いいぞ。美沙のは、中華弁当?」
「チンジャオロースにやられました」
「腹減ってるとやられちゃうよな」
「もうね目に入った瞬間一発だった」
「高林さんは……。お、生姜焼き弁当」
「……コク……」
「ていうか、レジのとき見てんのに今さら何言ってんだろうな俺達」
なんか急に冷静になったわ。テンションを上げることではない。
「それはあれ。その場のノリ」
「とりあえず食うか」
「……コク……」
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