舌戦<開幕>
放送日当日。8年ぶりに母親が死ぬ原因を作った張本人と対面することになった鬼丸は殴りかかりたい気持ちを抑えるのに必死だった。
その怒りを感じたのか、マネージャーが鬼丸を制した。
「鬼丸さん、落ち着いてください。冷静に冷静に。怒りで冷静さを欠いたら今日の討論で負けてしまいます。あなたの目的は、星田議員を殴ることでなく、イジメを行った人たちを罰することでしょう。」
鬼丸は水を一口飲み、深呼吸した。
「ありがとう。もう大丈夫。」
そう言って、スタジオに入っていった。
番組が開始され、アナウンサーがオープニングトークを行い、メインへと番組は進行していった。
「では、本日のゲストをご紹介しましょう。国会議員の星田議員とお笑い芸人の鬼丸さんです。」
拍手で迎えられた二人は椅子に座った。
「では、まず鬼丸さんに確認です。鬼丸さんが作ったサービス『いじめ加害者リスト』。こちらのサービスは、企業や学校が採用や入学者を決める際に閲覧することが出来るようにするサイトだと聞いていますが、改めて説明をお願いします。」
「はい、こちらのサイトは企業や学校が必要に応じて閲覧できるサービスとなっています。なので、誰でも閲覧できるサービスではありません。また、こちらのリストに登録されるのは、運営側にイジメ被害に合っている人からの登録依頼を受け、全てが登録される訳ではなく、しっかりと事実確認を行ってイジメがあった事を把握した場合に登録します。これは冤罪対策です。リストから削除される要件も満たしております。こちらは、被害者が加害者を許し、削除を要請した場合です。ただし、複数人から登録依頼がされた人物に関しては、仮に登録依頼した全員が許して削除要請を出したとしても、再犯の可能性が高いとみなし削除は致しません。複数人では抽象的であり人により想定人数が異なるため、3人以上と定義しています。」
「鬼丸さん、ありがとうございます。こちらのサイトが今、世間や国会まで賑わせており、今日はイジメ0を公約に掲げ、鬼丸さんとも関係がある星田議員をお招きし、徹底討論をしていきます。」
「早速、いいですか?」
星田議員が発言の機会を求めた。
「はい、どうぞ。」
アナウンサーが発言を促した。
「まず皆さんに分かっていただきたいことは、私たち国会議員もイジメを認めている訳ではないということ。法治国家として法に則り国を発展させていくことを目指していること。一度の過ちでその人の人生における可能性を取り上げるのではなく、『更生』の芽を詰むことはあってはならないということ。過去の行いにより差別をすることなく、『今』を見て人を判断することも大切であるということ。など様々な点から見て、私や他の議員、マスコミ各社の方々が、あなたのサービスがもたらす社会へのデメリットを判断して、批判しているという事をご理解いただきたい。」
こうして、二人の舌戦の幕が切って落とされた。
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