会見

星田議員が会見を開くという情報は瞬く間にマスコミ各社に伝わり、会見場には100社以上が集まった。

鬼丸も会見を見ながらリアルタイムで反応するというコメントを出している事、会見日が土曜日ということもあり、日本中が注目する会見になった。


13時。

予定時刻になり、星田議員・校長・梨田の3人が会見場に入って来た。しかし、イジメの当事者である3人が現れないことにネットでは早くも炎上し始めていた。記者たちも想定していたメンバーが集まらなかったことに動揺し、会場がざわめいていた。


星田議員が口火を開いた。

「本日は、お集まり頂きありがとうございます。先日、お笑い芸人をされている鬼丸さんがライブ配信をされた件に関して、色々と事実無根な憶測が立っていたり嫌がらせが続いているため、ここで私たちからも本件についての意見を言わせて頂くために、会見を開くことにしました。」


3人は一礼し、着席した。

「先日、鬼丸さんが配信された映像の中に、イジメがあった事実が我々によって隠蔽されたという主張があったと聞いていますが、こちらは若干、事実とは異なります。動画を配信された後、改めて関係者全員を集めて事実確認を行ったところ、先日まで私の秘書をしていた人間が、私に勝手に忖度をして事実確認もせず、自作自演という虚偽の報告を私や学校側へしました。私自身、秘書の報告を聞いて終わりにしてしまった事は今思えば、誤りであったと反省しています。その点についてはこの場を借りてお詫びさせて頂きます。申し訳ありませんでした。」


すると3人は再び席をたち、頭を下げた。その瞬間、ものすごい数のフラッシュがたかれた。30秒近く頭を下げたあと、再び着座した。

「本来であれば秘書も本日、この場に来てお詫びをさせて頂くはずだったんですが、昨日から連絡が取れていません。自宅に1通の手紙が置いてありましたので、今読まさせて頂きます。」


『鬼丸様、ならびに関係者のみなさまへ


この度は、私の愚行により鬼丸さま並びに関係者の皆さまへ多大なご迷惑をお掛けしてしまったこと、深くお詫び申し上げます。


本当に申し訳ございませんでした。

鬼丸くんの件は全て、私の独断により動いた結果であり、星田先生や校長、担任の先生は私の報告のせいで誤った判断をすることになっただけです。学校側には、星田先生の名前を借りて圧力をかけ、イジメの事実確認を行う事を禁止しました。星田先生には、学校側が事実確認の調査を行い、イジメはなかったという回答をしてきたと伝えました。イジメの当事者とされている星田先生のご子息を含む3人からも『謝りたい』と打診があったにも関わらず、それをさせないようにしました。


何もかも、私が勝手に先生を守ろうとした事により今回の事態を招いてしまいました。守ろうとした理由は、責任感ある先生がこの件を受けて辞任されてしまったら私の仕事が無くなってしまうという自分勝手な理由からです。


鬼丸様のお母様の命を奪い、鬼丸くんの人生を大きく変えてしまった後悔は、昔からずっと心の奥底に閉じ込めて生きてきました。どうやってこの責任を取れば良いか、ずっと考え続けていた結果、一つの結論に至りました。


本当に申し訳ありませんでした。』



星田議員は時折、言葉に詰まりながら手紙を読み上げた。そして、手で涙を拭った。

「秘書がやった事は人間として最低の行為です。しかし、彼が責任の取り方として最悪の事を考えていたら困ると思い、この手紙を見つけた後すぐに警察に失踪届けを提出しました。


私たちは秘書からの情報を鵜呑みにし、鬼丸くんや息子たちから事実確認を行わなかったことは改めて、お詫び申し上げます。全て、私の責任です。私の元にライブ配信後から議員辞職を促すご意見を数多く頂いておりますが、私は責任の取り方として辞職は違うと考えております。私にできる事は、国会議員として活動を続け、日本からイジメを無くすことしかないと思っております。なので、私は議員辞職はしません。公約として掲げているイジメ0社会を実現するまでは、絶対に辞職しません。」


会見は質問を受け付けない形で行われていたため、星田議員の発言を持って終了となった。


鬼丸は一言だけ呟いていた。


「俺は許さない」

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