糾弾
鬼丸のゲリラ配信から数分後、星田・月野・空島・梨田の4人はSNSをやっていた事もあり、あっという間にネット上で晒され始めた。個人アカウントは炎上し、星田・月野にいたってはイジメられた人たちがまとめサイトを作り、自分が二人からされたヒドいことやカツアゲされたお金の総額、壊された私物の被害額などが多くの人の目に触れることとなった。
配信時、たまたま大学にいた二人は、見知らぬ人たちから暴言をはかれ、陰口を叩かれた。普段だったら挨拶をしてくれる友人たちからは軽蔑した目で二人を見られ、挨拶をしても無視された。さっきまでは親の威光を盾に幅を利かせていた環境が、一瞬にして肩身の狭い思いをさせられてしまった。
ファミレスに逃げ込んだ二人は、ファミレスでも指を差され、店内の全ての客から軽蔑されているような気がして、すぐに店を後にした。
「俺たちが何したってんだよな。昔の話を今更、掘り返しやがってアイツは何考えてんだよ。」
星田はイライラしながら道に転がっていた空き缶を蹴飛ばした。
「じゃあ俺は、バイト行くわ。」
月野は星田と別れて、バイトしている居酒屋に向かった。
バイト先の居酒屋に若い女性二人が入店し、月野がオーダーを取りにいくと、
「あなた、月野っていうんですね。もしかして昔、今お笑い芸人やっている鬼丸さんをイジメてた月野って人?」
と一人の女性が聞いてきた。
「違いますよ。今日、鬼丸さんがライブ配信をしてから同じ月野っていう名字だけで、多くの人から疑いの目を向けられて困っているんですよ。」
月野は嘘をついて、その場をやり過ごした。しかし、その後も同じ事を何組ものお客さんから聞かれて、その度に同じ嘘をつき続けたため、バイト終わりには疲れ切ってしまっていた。
バイトを終わらせSNSを開こうとアプリを開くと、コメント数が表示上限数まで行っていた。月野は、そのコメントを見る勇気もなく、そのままアプリを閉じた。
梨田も事なかれ主義で、これまで多くの生徒から発信されたSOSを無視し続けた最低教師としてのまとめサイトが立ち上がっていた。
梨田が現在、勤めている第二小学校の職員室には、苦情の電話が鳴り続いていた。梨田は、校長室に呼ばれて、鬼丸のイジメに関する件で詰問されていた。
梨田は、当時の校長から『イジメは無かった。鬼丸が自作自演で行ったものであることが確認されたから、その方向性で対応すること』と強く求められ、自分はその指示に従ったまでと主張し続けた。
学校から帰宅しようとすると、既に学校前にマスコミが大挙して押し寄せており、多くのカメラとマイクを向けられ、先ほど校長室で聞かれたような事をずっと聞かれ続けた。
鬼丸のゲリラ配信から僅か数時間後には、当時鬼丸をイジメていた加害者たち、学校の責任としてしっかりとした調査を行わず、自分たちの保身のために事実を闇に葬り去った関係者たちは社会から激しい追求を受け続ける側になった。
彼らには発言できる機会や主張を大勢に届けられる力もなく、当時の鬼丸と同じ状況に立たされた。彼らは、今になって当時の鬼丸が感じていた自分の意見や反論を言いたくても言う場すら与えられない無力感を味わうことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます