残飯その28 悲しみは足許に


 庇の陰から空を見上げる。

 灰色の雲が容赦なく雨を降らしていた。


 梅雨はわたしを悲しみで浸していく。


 泣いて。

 泣いて。

 泣いて。


 雨と一緒にわたしの涙も止んでいた。

 足許には大きな水溜まり。

 ペトリコールの匂いを乗せて、

 街には蒸気のベールが立ち昇る。


 いつしか隣に立つ彼。

 泣き腫らしたわたしは

 彼の胸に顔をうずめる。

 黙って背中に手を回す彼。

 その優しさにまた涙を流す。

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