Day1

雪解けのころ、両親は森に入った。

結構雪が残ってるので背の低い私は作業小屋で留守番。

魔法で土を捏ねて、小さな動物の姿に変形して遊んでたら、夕方前に慌てた様子の知り合いの兵士さんが来た。


「スタンピードだ!すぐに逃げろ!!」

「えっ!?でも、父ちゃんたち森から帰ってないよ!」

「そ、そうか…。でもここに居たら危ない!両親も逃げてるはずだから村まで避難するぞ!」


一瞬ためらったみたいだけど、腕を掴まれて強引に連れ出されてしまった。

でも、外に出てわかった。

普段静かな森がものすごくざわついてる。

すぐに逃げた方がいいみたいだ。


父ちゃんは『今日は東の森を探す』って言ってた。

東の森だと村への道を挟んだ反対側になるから、小屋へは来ずに村に向かった方が早い。だから、きっと村へ逃げてるよね…。


雪解け水でぬかるんだ小道を手を引かれて進んでたんだけど、森のあちこちからスライムが出てきた。


「やばっ!槍を持ってくれ!」


兵士さんに槍を押し付けられたと思ったら、横抱きに抱えられて兵士さんは猛ダッシュ。

兵士さんの腕越しに森を見たら、どんどんスライムが出てきてる。

しかもいつもみたいにポヨンポヨン弾んでなくて、獲物に体当たりする時みたいにビュンって感じで進んでる。

怖い!!あんなたくさんのスライムに襲われたら、絶対助からない!

以前森で見かけた溶けかけの動物の死体を思い出して、思わず兵士さんにしがみついてしまった。


ギュッと目を瞑ってガクガクゆすられながら運ばれ、ちょっと気持ち悪くなったころ、村の門に到着した。


門の前には何十人もの兵士さんがいて、隊長さんが兵士さんに声を掛けてきたけど、兵士さんは話すことも出来ずに荒い呼吸を繰り返してた。


「よくやった!少し休んだら隊列に加わってくれ。おい!門を少しだけ開けろ!子供を入れたらすぐに閉じろよ!」


いつもは優しい隊長さんの剣幕が怖かったけど、がんばって父ちゃんたちの事を聞かなきゃ!


「と、父ちゃんたちは?」

「すまん!俺たちも来たばかりで避難者を全員見たわけじゃないんだ。家に戻って確認してくれ」


話しながらの隊長さんに門の隙間から押し込まれてこけそうになったけど、近所に住んでるおじさんが助けてくれた。

おじさんと一緒に家に向かったけど、家は鍵が掛かってて入れなかったので、おじさんの家に入れてもらった。

夕食も出してもらったけど、父ちゃんと母ちゃんが心配で殆ど食べられなかった。

夜はおばさんに抱き締めてもらって一緒に寝ました。

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